41 ページ41
.
〜貴方 side〜
なかなか行動に移すのは難しくて
家でたくさん考えた。
崇裕さんと別れたのが土曜日の朝。
それなのに丸一日無駄にしてしまって
ようやく来れたのは日曜日の夕方。
どうしてか小瀧くんは家の中じゃなくて外から来た。
出かけていたのかな。
汗をかいていたから、走ってきてくれたんだと思う。
本当に自分勝手で申し訳ないことをした。
小瀧くんに促されて
再びこの家に足を踏み入れる。
あのときは体調が悪かったから気づかなかったけど
広くて綺麗な家。
「……待って、俺汗臭いからシャワー浴びてきてええ？」
『あ、うん』
「そのへん座ってええよ。あ、麦茶置いとくな」
小瀧くんは物凄いスピードでお風呂場へと消えた。
ど、どうしよう……
ラグの上に座ってテーブルの上に置かれた麦茶を飲む。
……素敵な部屋。
テレビ台の前に、家族写真みたいなものが飾ってある。
他にも
入学式なのかな。制服を着ている写真、幼少期の写真、
友だちと笑っている写真。
どれも
私にはないもの
小瀧くんは、愛されているんだ。
だからこんなに
温かくて優しい人に……
と、その時
リビングの扉が開いて
髪の濡れた小瀧くんが戻ってきた。
小瀧くんは私の姿を見るなり困ったように笑う。
「なんで床なんかに座ってるの。ソファー座ってええんやで？」
『……あ、……』
「ふふっ、もぉ。おいで」
小瀧くんが先にソファーに座って
私をその隣に座るようポンポン、と叩く。
優しい……ううん
優しすぎる声。
私は小瀧くんの隣に座った。
……どう、しよう
何、話したらいいか
分からない
崇裕さん、
「……橋本さん、なんかあった？」
『え……？』
話がある、と言ったのは私なのに
先に口を開いたのは小瀧くんだった。
「なんか、悲しそうな顔してる……泣いたん……？」
『っ、泣いてな、っ』
なんて嘘をつこうとしたのに
ツンと鼻の奥が痛くなって
かと思ったら
一気に目の前が滲む。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 245人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ハルカ | 作成日時：2022年10月13日 5時
