愛していると、【桃】 (ページ26)

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～小瀧 side～

さんむ。

10月の夜は冷える。

なんとなーくね

酔いを覚ましたくて歩いて帰っていた。

そんなに酔ってへんけどね

なんとなーくってさ、

時々すんごい偶然を招く。

『今日も楽しかったです』

「ん。俺も。また会おうな」

『はい、ぜひ』

数十メートル先。

タクシーから降りてくる一人の女の子。

もう何日も、俺の頭を埋めつくしている
橋本さん。

暗がりの中でタクシーの中に見えたのは男の人。

……あぁ、

また、笑ってる。

少し話して、タクシーは消えて行った。

途端に橋本の横顔からは笑顔が消える。

下を向いて
左の腕に爪を立てて。

「……そんなことしたら、痛いやろ……？」

気づいたときには、俺の足は橋本さんの元へ向かっていて
そう声をかけていた。

『……こ、たき、くん』

俺の声に気づいて顔を上げる橋本さん。

目をまん丸にして、“なんでいるの”って訴えてくる。

街の明かりに照らされて見える綺麗な顔。

目は赤くて、
頬には涙の痕が。

「……なん、してたん、」

そんなの、聞かなくたって分かる。分かってる。

俺が誰よりも分かってる。

なのに、

いざ

見てしまったら。

「……着いてきて」

俺は橋本さんの手を引いて歩き出した。

……行く先は、

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