小瀧、いとこ溺愛してます 1【桃】

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〜貴方 side〜

「Aが俺のこと可愛いとか言うから」




そう言ってのんちゃんは私の手の甲にキスを落とした。


その瞬間がすごくスローモーションに見えて
“王子様みたいだなぁ”なんて漠然と。




「可愛い？」

『……も、嫌になるくらいかっこいい』

「んふふっ、俺の勝ち〜」

『のんちゃんが本気出したら勝てるわけないじゃん！』

「のぞむ」




のんちゃんの真っ直ぐな瞳が私を捉えて離さない。


呼んで、の意味なんだろうなぁ




『……のぞむかっこいい。……うわっ、！』




私がそう言うと、のんちゃんは満足そうに笑って私の手を引っ張った。


無理やり上体を起こされて
かと思えば私を押し倒していたのんちゃんに抱きしめられる。




『のぞむ』

「ん」

『のぞむくん』

「ん、ふふっ。違和感しかない」

『のぞむ氏？』

「独特すぎひん？」

『ののちゃん』

「うわ、姉ちゃん思い出す(笑)」

『ん〜、小瀧』

「ダメ！ 小瀧が一番だめ！」

『ふふっ』




なんか平和すぎて笑えちゃう。


ただ名前を呼んでるだけなのにこんなに幸せ




『私たちさ』

「おん？」

『血繋がってなかったら絶対バカップルになってたよね』

「……Aがそんなこと言うの珍しいやん」




せやね〜、なんて言いながら
のんちゃんは私の背中を優しく叩いた。


血が、繋がってなければ。
いとこじゃなければ。




「でもAよく言うやん？」

『うん？』

「いとこやなかったらそもそも出会えてないって」

『あぁ〜、そうだね』




のんちゃんが生まれたのが大阪で
私が生まれたのは名古屋。

それに私は高校卒業してからアメリカに行った。

のんちゃんがいなければきっとそれから日本に戻ってくることもなかったと思う。


世界には70億人も人がいるんだ。


出会う確率なんてゼロに等しい。




「ガキだった頃はよく“なんでAといとこなんや”って思ってたけど」

『うん、知ってる(笑) よく泣いてたもんね』

「は！？ 泣いてねえし！！」




Aと結婚するの！ ってのんちゃんが周りの人に言ったら
親戚や他のいとこだからダメだよ って言われて

それで落ち込んでよく泣いてた。




「まぁでも、こうやって一緒におれたらいいかなって最近やっと思うようになった」

『成長じゃん！ すごい！』

「ガキ扱いすんな(笑)」




結婚、かぁ

多分私は一生独身のままのんちゃんといるんだろうな


結婚して子どものいる家庭を作ることだけが幸せだとは全然思わないし
のんちゃんがいればそれだけで幸せだから。




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