幸せ時間は分刻み。【及川 徹】 ページ10
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『……うるさいの。……わかる?』
俺に言い聞かせるように言う彼女。
大学生のAは俺よりも忙しいらしい。
………で、今は明日提出のレポートを書いてるんだとか。
「いいじゃん。久しぶりに会えたんだし、遊ぼ?」
『だからってさ、隣で音楽流されたら少なからずイラっとはするよ?』
「…嫌う?」
『……嫌わない…けど…。』
音楽プレーヤーを止めて彼女の後ろに行く。
鎖骨をわざと撫でるように抱きしめると、ぴくっと反応した。
………あー、やばいな。かわいい。
「…ね?遊ぼ?」
『……遊ぶ…って何して…?』
「んー…。……とりあえずイチャつく?」
『……5分だけね。』
お互いに向き合う形になったら、どちらからともなく唇を重ねる。
触れ合うだけのキスを何回も。
『……っ、とお、る…、』
「ん、…なに?」
『ぎゅっと、して?』
………なんでしょ、この可愛さ。
遠慮がちに両手を広げてくるA。
「ぎゅーっとしてあげる。」
『…っ苦し、』
「かーわーいーいー…。」
思いっきり抱きしめればAもぎゅっとしてくれる。
キスもいいけど、ただ抱きしめるのも好きかもしれない。
『……徹。』
「なーに?」
『5分、経った。』
「…え?」
スルッと腕の中から抜け出して、また机に向き合うA。
何事も無かったかのようにペンを持って書き進めていく。
………え?マジで?
「冷たーい。」
『……たまにだから良さがわかるでしょ?』
「…まぁ、……それは、そうだけど…。」
『次はぁ…、20分後?』
「…待ってる。」
ちょっとの我慢と、短い幸せ。
短い中にも幸せがぎゅっと詰まってるんだ。
……でも、もう少し長くしてくれないかな。
『レポート終わったら、少し延長する?』
「もちろん!」
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迷人 - このお話、キュンキュンしかしませんね…。爽やか文章、羨ましいです。テイクアウト可能ですか…? (2015年8月15日 2時) (レス) id: 0a7f61b567 (このIDを非表示/違反報告)
虚弱兎(プロフ) - 新作おめでとうございます!!短編集とても素敵です!!爽やかな文体とよく似合いますね!!憧れます(>_<)更新、無理せず頑張って下さいね~!応援しております!! (2015年7月30日 22時) (レス) id: bf235a5d37 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:に ゃ 。 | 作成日時:2015年7月30日 21時