救済 ページ8
「_____________は」
息が詰まる。あまりにも突飛な、衝撃的なことを言われると、人は言葉を音として認識いても、意味を理解できないことがある。
「辛かったろう。苦しかったろう」
彼はそんな私をよそに、ただ言葉を紡ぐ。
____気づけば勝手に、足が前に出ていた。
この時母を見捨てた事を今も後悔はしていない。
「____もう、大丈夫」
慈愛に満ち満ちた優しい声音。私が1番辛かった時に、1番欲しかった言葉をかけてくれた人。
彼の後ろに、後光がさして見えた。
それほどまでに尊いと思った。ここまで人間は、他人の心を救えるのだと、感動して涙が溢れた。
「___おいで」
彼が手を拡げる。後ろなんか振り返らず、一心不乱に彼のもとへ駆ける。
そして、彼の胸の中に飛び込んだ。
彼の体温は、春の陽日のように暖かくて、冷たく凍りついた私の心を、急速に溶かしてくれるようだった。
____どうしようもなく、この瞬間、私は夏油傑に救われた。
彼の胸の中で、人目も憚らず、彼の五条袈裟が汚れてしまうにもかかわらず、声をあげて泣いた。
非術師の祈りの怨嗟が響き渡る広間で、そこだけが聖域だというかのように光り輝いていた。
______救われた。救われてしまった。救われた、から。
「______大好き」
私の心は完全に夏油傑の虜になってしまったのだった。
*****
その後、私は彼の家族に迎えられた。
「もう身体は大丈夫かい?君、会った時、ガリガリでびっくりしたから………心配してたんだよ」
「はい。呪力の操作も出来るようになってきましたし…………。吸血衝動も嘘のように収まりました」
彼は私の横に座り、続ける。
「呪力のコントロールが安定したからだろうね。あ、そうそう。君の家系を勝手に調べさせて貰ったんだけど。面白いことが分かったんだ。…言っても、いい?」
「な、なんだったんでしょう」
「君の家系、赤城家は、御三家のうちの1つ、加茂家と遠縁だった。遠縁に超がつくけどね。たまにあるんだよ。強い呪術師の血が入ってると、遠縁でも君みたいにぽっと術式を持った子が産まれてくることがある」
…御三家が何かはよく知らないが、とりあえず遠い親戚に呪術師がいるということは分かった。
「…そういう人達を救ってるんですね」
「あぁ」
彼は目に光を宿して、声に力を込めて話す。
「呪術師みんなが、幸せに生きられる世界をつくりたいんだ」
だから私は、本心を告げる。
「じゃあ私が、家族として…………いいえ、妻として貴方を支えますね」
「ん……………?」
*****
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おるた(プロフ) - えとさん» 感想サンキューソーマッチです!!そうなんですよ……私も傑最推しなので……………最後まで読んで頂き、ありがとうございました! (2021年3月31日 17時) (レス) id: f5b2ddd409 (このIDを非表示/違反報告)
えと(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!傑推しなのでこの作品に出会えて良かったです!!!推しが報われて本当に良かったなって思いました...!素敵な作品ありがとうございました! (2021年3月31日 16時) (レス) id: fd1beeb0fc (このIDを非表示/違反報告)
おるた(プロフ) - 終夜さん» 感想ありがとうございます(((o(*゚▽゚*)o)))めっっちゃ嬉しいです………ニヤニヤが止まらないです笑笑 (2021年3月30日 19時) (レス) id: f5b2ddd409 (このIDを非表示/違反報告)
終夜(プロフ) - アッ誤字ってしまった…。()友人にも布教させてください… (2021年3月30日 18時) (レス) id: be63cd896a (このIDを非表示/違反報告)
終夜(プロフ) - 完結おめでとうございます…。本誌の夏油傑が報われなさすぎて絶望しかなかったけど、こんな素晴らしい小説に出会わせてくれてありがとうございます…!推しが報われない→夢主投下。天才が此処にいた。年末の映画までリピート読まさせて頂きます…!! (2021年3月30日 18時) (レス) id: be63cd896a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おるた x他1人 | 作成日時:2021年3月25日 20時