眩光 ページ7
私は、その日から引きこもるようになった。
家族とも極力話さず、関わらず自分の部屋の隅で怯えるだけの毎日。
「学校で、何かあったの?いじめ?A、お願い。本当の事を話して」
違う、違うのお母さん。お願い、これ以上私に近づかないで。
____いつあなたにナイフを突き立ててしまうか分からないから。
「精神科にでも連れていくか?恥ずかしい。お前の育て方が悪いんじゃないのか」
「違うわ。本当に、突然のことなのよ。信じて。A、本当に本当に、真実を話して。お母さん、また叩かれちゃう」
エリート街道を通って生きてきた、挫折をまるで知らない父は、『普通じゃないもの』に対しての耐性がゼロだった。
_____やがて父と母は離婚した。
私が、家族を引き裂いてしまった。綺麗な一軒家から追い出されて、母とボロボロのアパートに引っ越した。
母は精神的に壊れてしまったのだろう。
盤星教とかいう怪しげな宗教に、少ない僅かな生活費さえ、お布施だと言って貢ぐようになってしまった。
____一日一食だという日が何日も続いた。
そんなある日だった。
「私の願いが通じたみたい。今日、教祖様が私とあなたを見てくれるって。あなたに取り憑いた悪い悪霊を、神様の力で退治してくれるのよ」
濁りきった瞳で母はそう言い、やせ細った私を強引に社寺のような施設へ連れていった。
そして大広間のような場所へ通される。
そしてそこにはまさに、異様と言うべき光景が広がっていた。
「「夏油様、夏油様。お助け下さい。お恵みください」」
畳の上、茶色の着物を着た信者達が頭を下げ、祈りの言葉を念仏のようにブツブツと唱え続ける。
彼らの頭の先の方角、1段高くなった上座に彼は胡座をかいて座っていた。
そして彼は自分の周りに、醜い色形、禍々しい呪力を放つ無数の呪霊を従えている。
さしずめ、呪霊の“王”のように。
「お母さん、待って、」
危険を感じ、母を呼び止める。なのに母は応じない。
そうか。母はこれが、見えていないんだった。
同じ人間という種だというのに、私と母の間には、埋まる事なき隔絶した認識の差があった。
母も他の信者と同じように、膝をつき、畳に頭を擦り付ける。
____私なんて、まるで眼中にないかのように。
「そこの君。もしかして_________」
私の絶望なんてよそに、夏油様と呼ばれる男は、私に向かって静かに語りかける。
その目は澄んでいて、信者達を見下ろす目とは異なっていた。
「“見えている”のかな?」
____運命が、流転する。
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おるた(プロフ) - えとさん» 感想サンキューソーマッチです!!そうなんですよ……私も傑最推しなので……………最後まで読んで頂き、ありがとうございました! (2021年3月31日 17時) (レス) id: f5b2ddd409 (このIDを非表示/違反報告)
えと(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!傑推しなのでこの作品に出会えて良かったです!!!推しが報われて本当に良かったなって思いました...!素敵な作品ありがとうございました! (2021年3月31日 16時) (レス) id: fd1beeb0fc (このIDを非表示/違反報告)
おるた(プロフ) - 終夜さん» 感想ありがとうございます(((o(*゚▽゚*)o)))めっっちゃ嬉しいです………ニヤニヤが止まらないです笑笑 (2021年3月30日 19時) (レス) id: f5b2ddd409 (このIDを非表示/違反報告)
終夜(プロフ) - アッ誤字ってしまった…。()友人にも布教させてください… (2021年3月30日 18時) (レス) id: be63cd896a (このIDを非表示/違反報告)
終夜(プロフ) - 完結おめでとうございます…。本誌の夏油傑が報われなさすぎて絶望しかなかったけど、こんな素晴らしい小説に出会わせてくれてありがとうございます…!推しが報われない→夢主投下。天才が此処にいた。年末の映画までリピート読まさせて頂きます…!! (2021年3月30日 18時) (レス) id: be63cd896a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おるた x他1人 | 作成日時:2021年3月25日 20時