別離 ページ15
任務失敗。
この敗北は、俺達に様々な変化をもたらした。
俺は天内達の犠牲と引き換えに、“最強”に成った。
文字通り、見る世界が変わった。
力を得た。ならば、俺の親友がいつも言っていた通り_______
大勢を、大多数を助ける道を選んだ。
これまでの犠牲を無駄にしない。その一心で、戦い続けた。
_______一方、傑は。
犠牲を、見つめた。犠牲を、一つ一つ悼んで、それを丁寧に拾い上げる道を選んだ。
俺と傑の考え。そこにどちらが上、などといった概念は存在しない。
_____どちらも正しい、尊ぶべき選択だ。
だから、気づけなかった。
俺は、前を向いて歩き始めた。
傑は、後ろを向いて歩き始めた。
背中合わせ。二人が再度歩き始めた道は、もう二度と、交錯することの無い道だった。
あの事件以来、一人で行動することが増えた。
…もう、自分の歩むべき道は決まったから。
そして当然のように、親友は自分の横を歩いているものとばかり思っていた。
_____あの時一度でも、振り返っていれば、こんな今は無かったのだろうか。
*****
傑は、呪術規定を破り、高専を追放された。
「______もし、私が君だったら、この馬鹿げた理想も地に足がつくと思わないか?
生き方は、もう決めたんだ。後は、自分にできることを精一杯やるだけさ」
無下限を構える。
それを見る傑の目。そこに浮かぶ感情は、六眼では見通せない。
「…殺したければ殺せ。それには意味がある」
そう言って、去って行った傑の後ろ姿がこの目に焼き付いたまま離れない。
_____救えない。
俺では、いいや、“僕”では傑を一生救えない。
手を下ろす。行き場のない腕が、だらんと垂れる。
人混みに紛れ、傑はあっという間に見えなくなった。
_______僕は、お前になりたかった。
吐き気がするほどの正論を振りかざし、辛さも弱さも、全部塗りつぶして、ひたむきにそれを貫き通すお前が、格好良かったんだよ。
もう一度繰り返す。僕では、救えない。道は既に分かたれてしまったのだから。なら、僕がお前にしてやれることは_______殺して止める、それだけだ。
*****
目を開ける。
「どうした、五条。寝てるなんて珍しいな」
家入硝子は、仕事着の白衣に身を通し、既にこれから始まる戦いでの傷病者に備えている。
「いや、ちょっと目をつぶって考え事していただけさ」
五条悟は立ち上がり、六眼に、ぐるぐると白い包帯を巻き付ける。
そして、歩き出す。
____長い長い、一日が、始まろうとしていた。
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おるた(プロフ) - えとさん» 感想サンキューソーマッチです!!そうなんですよ……私も傑最推しなので……………最後まで読んで頂き、ありがとうございました! (2021年3月31日 17時) (レス) id: f5b2ddd409 (このIDを非表示/違反報告)
えと(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!傑推しなのでこの作品に出会えて良かったです!!!推しが報われて本当に良かったなって思いました...!素敵な作品ありがとうございました! (2021年3月31日 16時) (レス) id: fd1beeb0fc (このIDを非表示/違反報告)
おるた(プロフ) - 終夜さん» 感想ありがとうございます(((o(*゚▽゚*)o)))めっっちゃ嬉しいです………ニヤニヤが止まらないです笑笑 (2021年3月30日 19時) (レス) id: f5b2ddd409 (このIDを非表示/違反報告)
終夜(プロフ) - アッ誤字ってしまった…。()友人にも布教させてください… (2021年3月30日 18時) (レス) id: be63cd896a (このIDを非表示/違反報告)
終夜(プロフ) - 完結おめでとうございます…。本誌の夏油傑が報われなさすぎて絶望しかなかったけど、こんな素晴らしい小説に出会わせてくれてありがとうございます…!推しが報われない→夢主投下。天才が此処にいた。年末の映画までリピート読まさせて頂きます…!! (2021年3月30日 18時) (レス) id: be63cd896a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おるた x他1人 | 作成日時:2021年3月25日 20時