旧友 ページ11
ヒーローに、憧れていた。
強い信念を持ち、弱きを助け、悪を挫く。
…美しく、完璧な在り方だと思っていた。
私には、幸福なことに、才能があった。
恵まれて産まれたのだから、恵まれなかった者を、その力でもって救済するのが、自分が天から与えられた使命だと思っていた。
途中までは、それでうまくやれていた。
本気で高め合い、切磋琢磨出来る、そんな友もできた。
…ただただ単純に、楽しかった。そんな日々が、永遠に続くと思っていた。
そんな傲慢な考えを、幻想を、世界は許さなかった。
どす黒い人間の悪意。
それは清らかなものを、尊ぶべきものを、容易く踏みにいじり、真っ黒に染め上げてしまう。
…無知は罪だ。
悼むべき尊い命が、多くの悪意に、惨たらしく消費されていく世界の仕組みを知った。
そんな見えない犠牲を基盤にしておきながら、世界は今日も平和だと世迷言をうそぶく。
嫌いだ。非術師が嫌いだ。
この世界そのものが、どうしようもなく、嫌いだ。
*****
「…変わらないね、ココは」
懐かしさのあまり、そんな感想が口をついて出た。
幻想を追い求めていた、楽しく愚かな日々が羞恥心を煽った。
*****
「じゃあ一体、どんなつもりでここに来た?」
久々に会う友は、高専の教師なんかをしているらしい。知った時は正直耳を疑ったが_____案外様になっていて、面白い。
「宣戦布告さ。来たる12月4日、我々は京都、東京各所で百鬼夜行を行う!
_____思う存分、呪いあおうじゃないか!!」
宣言する。
自分に、喝を入れる。
何度も何度も、言い聞かせる。
そんな夏油傑の様子を、Aだけが不安に揺れる瞳で見つめていた。
*****
その日の夜。
ソファーに座り、ぼんやりとしているAを、後ろから夏油は抱きしめる。
「……怖い思いをさせてしまったかな?」
彼女は、ふるふると首を横に振る。
「そうじゃないの。そうじゃないけど………」
上手く言葉にならないA。
「私の姿を見て、幻滅したかい?」
「…私は、世界で一番傑が好きだよ。一番好き。大大大好き」
泣きそうな顔で、Aは続ける。
「傑は、目的と私、どっちが大事?」
いつか、気づかれてしまうと思っていた。
「…すまない。その質問には、答えられない」
Aは、露骨に顔を歪め、傷ついた顔をした。そして慌てて笑顔を作る。
「ごめんね。傑を困らせるつもりはなかったの。今日はもう寝るね。おやすみ」
「…………あぁ、おやすみ」
暗い、暗い星のない夜が、更けていく。
128人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おるた(プロフ) - えとさん» 感想サンキューソーマッチです!!そうなんですよ……私も傑最推しなので……………最後まで読んで頂き、ありがとうございました! (2021年3月31日 17時) (レス) id: f5b2ddd409 (このIDを非表示/違反報告)
えと(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!傑推しなのでこの作品に出会えて良かったです!!!推しが報われて本当に良かったなって思いました...!素敵な作品ありがとうございました! (2021年3月31日 16時) (レス) id: fd1beeb0fc (このIDを非表示/違反報告)
おるた(プロフ) - 終夜さん» 感想ありがとうございます(((o(*゚▽゚*)o)))めっっちゃ嬉しいです………ニヤニヤが止まらないです笑笑 (2021年3月30日 19時) (レス) id: f5b2ddd409 (このIDを非表示/違反報告)
終夜(プロフ) - アッ誤字ってしまった…。()友人にも布教させてください… (2021年3月30日 18時) (レス) id: be63cd896a (このIDを非表示/違反報告)
終夜(プロフ) - 完結おめでとうございます…。本誌の夏油傑が報われなさすぎて絶望しかなかったけど、こんな素晴らしい小説に出会わせてくれてありがとうございます…!推しが報われない→夢主投下。天才が此処にいた。年末の映画までリピート読まさせて頂きます…!! (2021年3月30日 18時) (レス) id: be63cd896a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:おるた x他1人 | 作成日時:2021年3月25日 20時