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「まだこれからについてはAちゃんと話してないけど、カメラマンとしての仕事は1度休むつもりだと思う」
休むつもり、と言うより色が見えないんだ。
休むより他ない。
「東海の撮影は?Aちゃんの負担になるならさせるべきじゃないとおもうけど」
「どう思う?てつや」
「んーーー…こればっかりはなぁ…本人の意思確認するしかないやん」
「そうだね、僕もそう思う。1人でいるのだって、きっとしんどいだろうから」
そこでそれまでただの傍観者だったとしみつが口を開いた。
「つったって、ただのストレスなんだろ?ちょっと休めば良いだろ。なんでそんな1人にさせたがらないんだよ」
としみつの眉間にはシワが寄っている。
確かに、ただの体調不良ならそれが賢明だろう。
ただ、Aちゃんは色が見えない。
きっと今の状態じゃ、日常生活だってままならないだろう。
それを隠しながら、どう伝えるか…
頭の中で考えるけど、上手く切り替えせなかった。
「でもまぁ、あんだけ働いてたAちゃんだし、休むことで変に罪悪感感じてそれがストレスになっちゃいそうだよね。そこはてつやの言う通り、本人次第じゃない?」
…助かった。
りょうくんが上手く返してくれたおかげか、としみつも不満顔ながら仕方ないと思ったのかそれ以上は何も言わなかった。
「取り敢えず、今は解散っつー事で。虫さん、Aが少し落ち着いたら話し合いするために連れてきてもらえる?」
「もちろん、そのつもり」
僕はとりあえずAちゃんの荷物を届けるためにまたてつやの家を出た。
Aちゃんの家に着きインターホンを押すと『……はい』と少し疲れた声で応答するAちゃん。
「Aちゃん、荷物持ってきた」
『…ありがと虫さん、入って』
その声と同時にエントランスの扉が開く。
そのままゆっくりとAちゃんの部屋を目指した。
数時間ぶりに会ったAちゃんは少し落ち着いたのか、表情は暗いものの顔色は少しばかり良くなっていた。
「はい、荷物。どう?体調は」
『ごめんね虫さん、ありがと。体調は…何とも。こんなに色が見えないって不便なんだね』
そう言って苦笑いするAちゃん。
座って、お茶出すよ。と言うけれど、やはりモノクロの世界は僕の想像以上に不便なようで全ての動きが覚束無い。
「Aちゃん、良いよ。お構いなく」
そうやんわりと断ると、悲しそうに ごめんね と呟いた。
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夜宵(プロフ) - 最後のお話、すごく考えさせられました 確かになぁと納得する反面なんだか寂しくて恐ろしくてゾッとしました このような視点からのお話も新鮮でとても良かったです 次回も楽しみにしています! (2020年6月14日 19時) (レス) id: af02700ee8 (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 切ない!!!!!そして次回予告がオレンジさん!!!!!!!!!!楽しみです!!!!! (2020年6月14日 17時) (レス) id: 534e341e06 (このIDを非表示/違反報告)
すもも(プロフ) - 何回読んでも好きな作品なので新しく更新されてて嬉しいです^ ^!本当に面白かったです!これからも頑張ってください! (2020年6月14日 10時) (レス) id: e3e9a8bac6 (このIDを非表示/違反報告)
ray - 色覚異常って男性にしか起こらないからちょっとモヤモヤ…笑 (2019年10月19日 20時) (レス) id: 3d88fa54c6 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - *vanilla*さん» コメントありがとうございます。お話の中に入り込んで頂き、そこまで読み込んで頂けて作品を書いた身としてもとても嬉しいです。本当にありがとうございます。 (2019年2月13日 18時) (レス) id: 91827dbe31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヨウ | 作成日時:2019年1月3日 17時