さ よ な ら 、世界。

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りょうくんとしばゆーは家に帰り、僕とAちゃんはそのままてつやの家で作業中。





僕は編集、Aちゃんはカメラのメンテナンスをしているようだ。

編集をしながら、先程のとしみつを思い出す。

あんな言い方、しなくてもいいだろうに。
Aちゃんの顔はとてもショックを受けていた表情をしていた。


無理して明るく振舞っていた。
それがまた見ているのが辛くて、正直ご飯の味など覚えていない。




としみつは、Aちゃんがここに来た時からあんな態度だった訳じゃない。
初めて撮影に参加した時だって、としみつが隣につきAちゃんのサポートをしていた。
それは今と比べ物にならないくらい仲のいい2人だった。

それが、いつからか、としみつがAちゃんに強く当たったり、冷たい態度を取るようになり、それが今の形。

今の2人だった。


Aちゃんは口では言わないものの、多分としみつのことが好きなんだと思う。
としみつと他のメンバーを見つめるその瞳は全く違っていたからだ。


勿論、誰にでも優しいAちゃんだけど、としみつとはまるで熟年夫婦のような阿吽の呼吸だった。

あんなに楽しそうな2人だったのに、一体何が2人をあんな形にしてしまったんだろう…

きっとそれを知っているのは、としみつだけだ。






リビングには僕のパソコンのキーボードを叩く音と、Aちゃんがカメラのシャッターを切る音だけが聞こえる。






『あれ？』



カメラの不具合だろうか？
珍しくAちゃんが声を上げた。

まぁウチの自慢のカメラマン、どんな不具合も直してしまう彼女だから、特段気にしていなかった。

だが、どうだろう？

『…なんで？』

いつになく苦戦しているのか、Aちゃんの声が響く。



『ねぇ、虫さ』


僕が顔を上げたのとほぼ同時だった。





ゴトン！！！



鈍い音を立ててカメラが床へ落ちる。

「え！？ちょっ！カメラ！」

僕は慌ててカメラを拾い上げる。
ぱっとAちゃんの顔を見上げると、目を見開いたまま固まっていた。

「え、どうしたの…」

『虫さん…虫さんの座ってる椅子、何色？』

「へ？どっからどう見てもオレンジだけど…本当にどうしたの？頭おかしくなっちゃった？」

そう冗談で言ったはずなのに。




『おかしくなっちゃったかも』

「え？」





『私の目、色が見えなくなっちゃった…』


Aちゃんの目からポロリと涙が1粒落ちて消えた。

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