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虫さんに連絡するとすでにてつや、りょう、としみつと撮影を始めているようだった。
午前に予定が入っていた俺は「昼前には着けそう」と連絡すると、じゃあ昼飯宜しく、と重大任務を任された。
出前にするか、どうするか、取り敢えずてつやの家着いてから考えようと急いで向かう。
オートロックを開けてもらい、エレベーターに乗り込む。
撮影部屋では4人の笑い声が響いているので、音を立てないようにそっと部屋の前を通過した。
リビングに入るとテーブルの椅子に三角座りで座りながら真剣な表情でパソコンを操作するAちゃんが座ってた。まだ俺の存在には気付いてないようだ。
荷物を置いてから横から邪魔にならないように「おはよう」と声を掛けるとAちゃんはばっと顔を上げゆっくりとこちらを向く。
…あれ?なんだろう。
Aちゃんの動きに、すごい違和感を感じる。
俺の顔を捉えたのかほっとした表情をするが、その目は不自然にユラユラ揺れている。
『おはよう、ゆめまるくん。思ってたより早かったね』
「用事早めに終わってね」
『そうなんだ』
そう言ってまたパソコンに向かうAちゃん。
なんだろうこの違和感…
パソコン使っている時は至って普通なのに、ふとした瞬間違和感を感じるのだ。
気になるものの観察してもよくわからない。
あ、虫さんに頼まれてたお昼考えないと。
Aちゃんにも意見聞こうかな?
『Aちゃん』
ゆっくりと俺の声を辿るように振り向くAちゃん。
まただ。
この違和感。
その動きは振り向く、と言うより探す感覚なのだ。
俺の姿を、声を頼りに探している。
ばちりとしっかり視線が合うと どうしたの? と聞いてくる。
どうしたの?じゃないよ。
それは俺の台詞だよ。
なんて言えず。
「虫さんにお昼頼まれてたんだよね、Aちゃんは何食べたい?」
『うーん、そうだな…』
考えるように視線を落とし、うーん と唸っている。
そして視線が上がる瞬間、また視線が俺を探すように揺れる。
『久し振りに ソースかつ食べたいかな』
「わかった、じゃあそうしよっか」
『ありがとうゆめまるくん』
そう言ってまたパソコンに目を向ける。
パソコンを弄れるってことは、目は多少なり見えてるはずだ。
となると…
俺はひとつの可能性に気付いた。
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夜宵(プロフ) - 最後のお話、すごく考えさせられました 確かになぁと納得する反面なんだか寂しくて恐ろしくてゾッとしました このような視点からのお話も新鮮でとても良かったです 次回も楽しみにしています! (2020年6月14日 19時) (レス) id: af02700ee8 (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 切ない!!!!!そして次回予告がオレンジさん!!!!!!!!!!楽しみです!!!!! (2020年6月14日 17時) (レス) id: 534e341e06 (このIDを非表示/違反報告)
すもも(プロフ) - 何回読んでも好きな作品なので新しく更新されてて嬉しいです^ ^!本当に面白かったです!これからも頑張ってください! (2020年6月14日 10時) (レス) id: e3e9a8bac6 (このIDを非表示/違反報告)
ray - 色覚異常って男性にしか起こらないからちょっとモヤモヤ…笑 (2019年10月19日 20時) (レス) id: 3d88fa54c6 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - *vanilla*さん» コメントありがとうございます。お話の中に入り込んで頂き、そこまで読み込んで頂けて作品を書いた身としてもとても嬉しいです。本当にありがとうございます。 (2019年2月13日 18時) (レス) id: 91827dbe31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヨウ | 作成日時:2019年1月3日 17時