10 ページ11
あの日から数日経って、僕はてつやの家にAちゃんを連れいくためにマンションへ立ち寄った。、
「迎えに来たよ、どう?調子は」
『ありがと虫さん。相変わらず、かな。あ、悪い意味でね』
ちょっと日が経って整理がついたのか、以前のような明るさとまではいかないものの劇的に落ち込んだAちゃんはいない。
『てつやくんたちは?元気?』
「あいつらも悪い意味で相変わらずだよ、てつやの元気分けてあげたいくらい」
そう言うとAちゃんはへにゃりと笑って、少しだけ胸がほっとした。
てつやのマンションの駐車場に車を入れ、そのままエントランスへ向かう。
以前はフラフラしていたAちゃんも今はしっかりと歩いている。
その姿は、色が見えていないなんて全くわからない。
インターホンを鳴らすとすぐに誰かが鍵を開けてくれた。
エレベーターに乗り込み、上の階を押す。
てつやの家の扉は開いていて簡単に入ることが出来る。
ガチャリと音を立てて扉を開くとその音に気付いてか、奥の部屋からひょっこりとゆめまるが顔を出した。
「あ、Aちゃん!久しぶり。どう?調子は」
『あ、ゆめまるくん。心配かけてごめんね、まだ完全にという訳じゃないけど、良くはなってきてるよ』
そう言ってニッコリ笑うAちゃん。
その瞳に揺るぎはない。
Aちゃんは本気で「嘘」を突き通すつもりだ。
『……そういう訳でカメラマンとしての仕事は1度お休み貰うことにした』
「それがいいよ。Aちゃん最近すごい忙しかったじゃん。こないだも撮影だって弾丸で行っちゃうし」
『ありがとりょうくん、ちょっとゆっくりする』
「それでなんだけど、A東海オンエアの撮影の方はどうする?俺としてはちょっと休んでもらった方が良いかなって思ったんやけど…」
『んん、ずっと家にいるだけなのもなんか性に合わなくて…今までみたいにじゃないけど、お手伝いはしてもいいかな?』
「ええんじゃない?俺は反対しないよ。Aの好きにしたらいい。手伝って貰えるなら、俺らも助かるから」
「ありがとうてつやくん」
取り敢えず、これからは東海オンエアのお手伝いとしてちょっとずつ頑張ることになったAちゃん。
ずっと黙ってたとしみつだけど、何も言わないってことは認めたってことなんかな…?
僕はこれから先が不安になったけど、あとは少しずつ回復していくことを願うしかない。
459人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夜宵(プロフ) - 最後のお話、すごく考えさせられました 確かになぁと納得する反面なんだか寂しくて恐ろしくてゾッとしました このような視点からのお話も新鮮でとても良かったです 次回も楽しみにしています! (2020年6月14日 19時) (レス) id: af02700ee8 (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 切ない!!!!!そして次回予告がオレンジさん!!!!!!!!!!楽しみです!!!!! (2020年6月14日 17時) (レス) id: 534e341e06 (このIDを非表示/違反報告)
すもも(プロフ) - 何回読んでも好きな作品なので新しく更新されてて嬉しいです^ ^!本当に面白かったです!これからも頑張ってください! (2020年6月14日 10時) (レス) id: e3e9a8bac6 (このIDを非表示/違反報告)
ray - 色覚異常って男性にしか起こらないからちょっとモヤモヤ…笑 (2019年10月19日 20時) (レス) id: 3d88fa54c6 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - *vanilla*さん» コメントありがとうございます。お話の中に入り込んで頂き、そこまで読み込んで頂けて作品を書いた身としてもとても嬉しいです。本当にありがとうございます。 (2019年2月13日 18時) (レス) id: 91827dbe31 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ヨウ | 作成日時:2019年1月3日 17時