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「……へぇ、そうなんだ」


1拍置いて目の前の彼が言う。
ふと見上げた彼の瞳の奥は真っ暗で、何とも言い難い。何を考えているのか分からない。
それがすごく私の中で引っ掛かりを見せて、ついじぃっと彼の顔を見つめていたばかりに、背後から忍び寄る物に気付くことが出来なかった。


『…っ!いたたたたたっ!!』
「余計なこと言うなっつーの!りょうに話すとろくな事ねぇ」


つい先日が初対面だと言うのに、この男は仮にも彼女の頬を引っ張るというのか。
仮にもって言うか、本当に仮なんだけど。
力そこそこにぎゅーぎゅー抓られる痛みに耐えながらぱっとまたりょうくんの方に目を向けると、先程の違和感を含んだ瞳は閉じられていて、また糸のように細く細く伸ばされ可笑しそうに私たちを見ている。


「ちょっととしみつ!Aちゃん可哀想でしょうが!」
「うるせー!コイツが余計なこと言うから…」
『余計なことじゃないでしょ?だってカノジョになれって言ったのはとしみつくんじゃない!』
「やだとしくん、そんな男前な告白したの?チャラい〜!」
「チャラすぎ〜!!」


オレンジ頭とメガネの彼が突然腰をくねらせた女子のように声を高くしてとしみつくんに詰め寄る。
……正直言ってとても見るに堪えない光景だ。
まるで虫でも払うかのように手をブンブン振り回しうぜーうぜーと連呼する彼は不機嫌そうに1つ鼻を鳴らすと先程まで座っていた椅子にストンと腰を下ろし、不満げに頬杖を付いた。
とうかいおんえあ、というグループを見るのは後にも先にもこれが初めてだが、なんだかこの空間でのヒエラルキーが見えてきた気がした。
(としみつくんはからかわれやすい、と)


「ねぇ、としみつとはどこで出会ったの?」


また長身の彼、もといりょうくんに尋ねられちょっと私自身も面倒くささが増してきた。
(というか、としみつくんとは馴れ初めも何も無いし)
このイケメンくんは人の恋バナ聞いて楽しいのか、と思ったが再びまた不信感が募る。
……何だろう。
彼に見つめられていると、全てを見透かされそうな気がして怖かった。


『えーあー…』


どこで出会ったか、なんてバカ正直に答えられる訳もなく口をもごもごとさせ言い淀んでいると、ここで鶴の一声が。


「A、こっちこい」


ちょいちょい、と手招きするとしみつくん。
初めて彼が役立ったと思いりょうくんをふと見つめると、大して気にする様子もなく「ほら、彼氏呼んでるよ」と私の背中をそっと押すのだった。

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設定タグ:東海オンエア , としみつ , Youtuber   
作品ジャンル:恋愛
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あじぽん〜(プロフ) - ふぁっ...設定がもう好きです。これから頑張ってください! (2020年7月26日 13時) (レス) id: 274279f3c9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ヨウ | 作成日時:2019年9月24日 16時

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