カレイドスコープ (ページ2)

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A、26歳、OL、未婚、彼氏…先程別れました…。

結婚を前提に5年間も付き合っていたのに、その終わりは「他に好きな女が出来た」と呆気なく。
5年間の想いは、ぽっと出の小悪魔のような女に簡単に打ち砕かれたのです。
本当は泣きたいくらい、今ここで泣き叫びたいくらい心は軋んでいるのに、一言も発することが出来ないのはまだ自分が現状を受け入れることが出来ていないから、だと思う。

何も考えられずに兎にも角にも辿り着いた最寄り駅で、ノロノロとカバンから定期券を取り出す。

ぴ、と軽い音が聞こえたのでゆっくりと改札を通る。
と、

どん、と思い切り後ろから押されてあっけに取られる間もなく、倒れる。

多分、私の後ろで改札通ろうとした人がぶつかってきたんだろうけど。
ちんたらちんたら歩いてる私も悪いんだけど。

何も、押し倒すことないじゃない！！！！！！

服に着いた埃をパタパタと払うと、私を倒したと思われる人があ、と声を上げたのが聞こえた。
そっちの方を見上げると、黒いキャップにマスクをした、なんとも怪しげな人が立っていて、文句を言ってやろうって気も失せた。
(だって怖いもん。見た目やばいもん)

「すいません」
『あ、いえ…』

ぱっと出された少しゴツゴツした男らしい手を思わず反動で握ってしまいそのまま立たせてもらう。
とりあえず、謝るだけ謝ってこの場を去ろう…
と、思った矢先、後ろから聞こえる女の子達の声。

「あ、いた…！！」

その女の子達の声に反応して私の手を掴んでいたその人は、私の腕を引いたまま走り出す。

『っ！！ちょっ！！ちょちょちょちょ…！！！！』
「あ！？わりぃ！！！！取り敢えずそのまま走って！！！」

なんなんだこの人！？
何で女の子に追われてるわけ！？
そしてこの人は私の手を離す気はないようで、握りしめたまま思いっきり走る。

全く訳が分からない。

涙も、先程までの悲しい気持ちも、

今だけはただただ吹き飛んだ。