5日目�� ページ13
車の中ではお互い無言だった。
Aは海が名残惜しいのか、見えなくなるまでずっと見つめていた。
また連れてきてやるよ、ともう一度約束すると、うん！と大きく頷き口角を吊り上げた。
家に帰る頃には12時近くになっていて、今日の動画は俺の担当なので急いで編集に取り掛かる。
Aは最初こそバジュラモジュラとお話したり(と言っても一方的にAが話し掛けるだけだけど)勝手に風呂場に行って水遊びをしたり(お気に入りの遊びらしい。やっぱり金魚だな)していたが、段々と飽きてきたようで、編集中の俺に声こそ掛けないものの、背後から痛い程の視線を感じる。
「………」
『………』
「………」
『………』
「……なに？」
『へっ？なんでもないよ！』
「…そんなに穴が開くほど見つめられるとこっちも困るんだなぁ」
『…ごめんなさい』
しゅんと縮こまってしまったAだが、別に怒りたいわけじゃない。
むしろ放置してしまい申し訳ないと思っている。
だが今は手を離すことが出来ない。
さて、どうしたものか…
「A、テレビでも見る？」
『？てれび？』
「そう」
そう言って、最近は全く使っていなかったリビングのテレビを付ける。
ぼんやりと光を放ちながら中に人が映るのを見て、目を丸くさせるA。
テレビを初めて見る人間て、こんな反応するんだな。
こいつは人間じゃないけど。
『この人、この箱の中にいるの？』
「いんや、違うよ」
『なんでこんな所に入ってるんだろ？すごいー！』
何にでも興味を持つAは直ぐにテレビに釘付けだった。
リモコンの使い方を教えてやると、すぐに覚えた。
大きなテレビの前に、バジュラモジュラを乗せた椅子を持ってきて、その隣に体育座りをしながらテレビを見つめるA。
(Aはバジュラモジュラが大のお気に入りだ)
これで少しはAも暇を潰せるかと安心した。
テレビの影響は凄いらしく、俺が編集全て終わったあともじっとAは見つめていた。
Aの中の好奇心が大いに擽られたのだろう。
Aの社会勉強には良いかな、と思いつつ、構ってもらえないと今度は俺が寂しい。
声を掛けてもテレビに釘付けなAの後ろに回り、後ろから覆い被さるように俺も座る。
所謂ラッコ座り？ってやつだ。
そのままAの頭に自分の顎を乗せ、一緒にテレビを見つめた。
Aから漂うふんわり優しい匂いに、いつの間にか俺は目を閉じていた。
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えみ - 話が美し過ぎた… (2020年7月20日 3時) (
レス) id: 4b46f7439f (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - *ameto*さん» ありがとうございます！曲とともに見て頂けて嬉しいです。イメージ通りのお話になっていたでしょうか？是非また他のお話も見て下さると嬉しいです！ありがとうございました！ (2019年9月6日 0時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» ありがとうございます！今回は今までの橙さんとは違った雰囲気のお話だったので、不安でしたがそう言って貰えて嬉しいです！でもやっぱりラブラブなお話が書きたくなるので、また次の橙さんに期待していて下さい！ (2019年9月6日 0時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
*ameto*(プロフ) - 完結おめでとうございます。こうなるとわかっていても避けられない、2人の運命にうるっと来ました…。神曲を教えてくださって、こんなに素晴らしい作品を読ませていただいて、本当にありがとうございました！ (2019年9月3日 0時) (レス) id: 7b77494f9e (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 完結おめでとうございます！執筆お疲れ様でした！毎度のことながら、素敵なお話をありがとうございます！ヨウさんの書く橙さんが大好きです！心がギュってなって、きゅんってなって。次回作も楽しみに待ってます！また橙さんをお願いします！！！ (2019年9月2日 18時) (レス) id: 318cc8d8b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヨウ
| 作成日時：2019年8月27日 11時
