7日目�� ページ20
参道を少し逸れた道。
この道が丁度上の神社の裏に続く道だ。
祭りからは離れるから、登れば登るほど提灯の暖かい光は遠くなる。
ここからは少しだけ道も険しくなるから、繋いだ手に力を込める。
俺の嵌めた指輪と、Aが嵌めた指輪がぶつかって、かちゃりと音を立てた。
ふと振り返ると、A越しに屋台の灯りが見えて少し寂しい感覚になったが、繋いだ手の温もりがあるから、大丈夫。
一歩一歩、踏みしめて歩く。
くん、と少し後ろに引かれる感覚がして、見るとさっきよりも息が上がったAが少しだけ辛そうに眉を顰めている。
「大丈夫か？」
『だい、じょぶ』
途切れ途切れの吐息で答えるが、そこから出る言葉は全てにおいて今の状態とは真反対だ。
取り敢えず、今より負担はかけないように、さらにスピードを落としてゆっくりと前へ進んだ。
握った掌が湿ってくる。
俺の手汗と、Aの手汗が混ざった感覚。
段々と疲労が目に見えてきて、心配になる。
花火はもう上がりそうな時間だが、スピードをあげる訳にはいかない。
「……A、無理すんな」
『てっちゃ、ん、だいじょぶ、だよ？』
呂律もたどたどしくなる。
どうしたものか、考えた結果。
これしか浮かばなかった。
「A、後ろ乗れ」
『え？』
「ほら、いいから！」
半ば無理矢理Aを背負い、あと少しの道を進む。
登れば登るほど、暗くなって道は見えづらくなる。
と。
『あ、』
背中に伝わる振動と、ひゅるひゅると登っていく火の玉。
大きな音と共に花開いた花火が横目に見える。
「始まっちまったな、あとちょっと！」
俺はラストスパート掛けるためにAを背負い直すとそのまま目的地まで駆け上がった。
『…………きれい』
「やっぱ穴場だな、誰もいない」
辿り着いた神社には誰もいなくて、裏の石垣に腰を掛けて二人並んで天高く上がる花火を見上げる。
『すごいね』
「久々に見たけど、やっぱいいなぁ」
そっと隣に置かれたAの手をギュッと握る。
多分、今までで見た花火の中で、いちばん綺麗だ。
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えみ - 話が美し過ぎた… (2020年7月20日 3時) (
レス) id: 4b46f7439f (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - *ameto*さん» ありがとうございます！曲とともに見て頂けて嬉しいです。イメージ通りのお話になっていたでしょうか？是非また他のお話も見て下さると嬉しいです！ありがとうございました！ (2019年9月6日 0時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» ありがとうございます！今回は今までの橙さんとは違った雰囲気のお話だったので、不安でしたがそう言って貰えて嬉しいです！でもやっぱりラブラブなお話が書きたくなるので、また次の橙さんに期待していて下さい！ (2019年9月6日 0時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
*ameto*(プロフ) - 完結おめでとうございます。こうなるとわかっていても避けられない、2人の運命にうるっと来ました…。神曲を教えてくださって、こんなに素晴らしい作品を読ませていただいて、本当にありがとうございました！ (2019年9月3日 0時) (レス) id: 7b77494f9e (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 完結おめでとうございます！執筆お疲れ様でした！毎度のことながら、素敵なお話をありがとうございます！ヨウさんの書く橙さんが大好きです！心がギュってなって、きゅんってなって。次回作も楽しみに待ってます！また橙さんをお願いします！！！ (2019年9月2日 18時) (レス) id: 318cc8d8b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヨウ
| 作成日時：2019年8月27日 11時
