4日目�� ページ11
ゆっくりと歩いた先には防波堤があって、その上に登っていく。
防波堤の先まで行って、このまま2人で腰を下ろした。
足元では、波が壁に当たる音が響く。
さっきまで怖かった夜の海も、今は月の光が一筋差していて恐怖心すら拭いさっていった。
特にお互い喋ることなく、じっと正面を見つめていると、Aが隣で小さな声を上げた。
『てっちゃん、上見て。きらきらたくさん』
「おー、星綺麗だな…」
『ほし？』
「そう。あの上で光ってんの全部星っていうの」
『へーえ』
Aはパタパタと足を揺らしながらじっと星空を見つめる。
その様子をじっと見つめていると、ほんの少しだけ、Aの輪郭が揺らめいた気がした。
「A…？」
思わずAの手を取ると、ずっと空を見上げていた彼女はビクリと肩を揺らした。
『ふぁ！びっくりした！』
「あ、悪い…」
握った手は勿論しっかり俺の手に温もりがあって、ちゃんと存在していることにほっと胸を撫で下ろす。
と、その時だった。
ぽちゃん、という音と共にAが大きな声を上げた。
『あ！お魚さん！！』
真下の海に落ちてしまった魚型のサンダルを拾おうと前のめりになるA。
ぐらり、とそのまま体が傾いた。
「っ！A！！」
落ちないようにグッと抱き寄せる。
それでもAは真っ暗な海へと手を伸ばす。
だめだ。だめだ。だめだ！
今ここで手を離したら、Aがどこかへ行ってしまう気がして。
先程蜃気楼のように揺らめいたAが頭から離れない。
もしかしたら、消えてしまうのかもしれない。
『ってっちゃん！お魚さんが！』
「いい！行くな！」
『でもっ…』
そう言ってこちらを見たAが動きを止めた。
『てっちゃん…？』
「だめだ、絶対だめだ」
『てっちゃん…泣いてるの…？』
「……」
『Aが、お魚さん流しちゃったから？』
「ちがう」
「どこにも行くな、A」
そっと顔を上げると、そこには目を大きくさせたAがいて、バッチリと目が合う。
ふわっと眉を下げて優しく笑うと、その小さな体で俺を包み込んだ。
『大丈夫だよ。Aは、ずっと、てっちゃんのそばにいるよ』
ぽんぽん、と優しく背中を叩かれて、やっとAがちゃんと隣にいる安心感を感じた。
Aが落とした魚型のサンダルはゆらゆらと水面を揺れ、また来た波に飲み込まれて見えなくなった。
でも、今はもう、それすらどうでもいい。
夜は、更けていく。
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えみ - 話が美し過ぎた… (2020年7月20日 3時) (
レス) id: 4b46f7439f (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - *ameto*さん» ありがとうございます！曲とともに見て頂けて嬉しいです。イメージ通りのお話になっていたでしょうか？是非また他のお話も見て下さると嬉しいです！ありがとうございました！ (2019年9月6日 0時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
ヨウ(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» ありがとうございます！今回は今までの橙さんとは違った雰囲気のお話だったので、不安でしたがそう言って貰えて嬉しいです！でもやっぱりラブラブなお話が書きたくなるので、また次の橙さんに期待していて下さい！ (2019年9月6日 0時) (レス) id: 523a836345 (このIDを非表示/違反報告)
*ameto*(プロフ) - 完結おめでとうございます。こうなるとわかっていても避けられない、2人の運命にうるっと来ました…。神曲を教えてくださって、こんなに素晴らしい作品を読ませていただいて、本当にありがとうございました！ (2019年9月3日 0時) (レス) id: 7b77494f9e (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 完結おめでとうございます！執筆お疲れ様でした！毎度のことながら、素敵なお話をありがとうございます！ヨウさんの書く橙さんが大好きです！心がギュってなって、きゅんってなって。次回作も楽しみに待ってます！また橙さんをお願いします！！！ (2019年9月2日 18時) (レス) id: 318cc8d8b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヨウ
| 作成日時：2019年8月27日 11時
