はたらくおにいさん。

茶×会社員 ページ16

「Aー！昨日頼んでた書類はー？」
『すいませーん！今持っていきますー！』

ガタガタと立ち上がり、デスクの上に乗せていた書類を先輩の元へ持っていく。

『すいませんっ！こちらです。お願いします』

先輩はメガネを上げると無言でじっと私の作った書類に目を通す。
この人は金澤先輩。
私の直属の上司だ。
先輩はなんでも出来る。仕事がめちゃくちゃ早い。
ミスがない。欠点がない。
あるとすれば、口が悪いこととちょこっと小さい事だろうか。あ、身長の話ね。

全てに目を通し終わったのか、先輩はジト目でこちらを見つめた。
あれ？私なんかやっちゃった…？

「…やり直し」
『え！？』
「ここ、昨日直しといてって言うたやん。直ってない」

ぽんぽん、と該当箇所を指差される。
あ、そうだった！忘れてた！

「それ、今日中だから。宜しく」

私の方をぽすん、と叩きニヤリと笑う先輩。

『え！？そんなこと昨日言ってましたっけ！？』
「言った」
『うそ！？』
「本当」

やばーーい！！！私他の仕事もめちゃくちゃ溜まってんのにぃ！！！
急いで自分のデスクに戻り、訂正箇所を直していく。
あああ、お昼休み返上しないと間に合わないよ…！




真剣にパソコンに向き合っていると、部長から「A、これコピー取ってきて」と言われる。
う、私今、手離せないんですけど…！！
しかし上司からの指示なので仕方なく言われたものを受け取りコピーしに行こうとすると、手元に持っていたはずの書類を後ろからぱっと取られる。
振り返ると先輩がいて、そのままコピー機へと向かって行ってしまう。


『先輩！それ！私の仕事ですから！てか先輩にコピーなんてさせられない！』
「…いいから。お前まだ書類訂正終わってないんだろ？これは僕に任せて、Aはそっちの仕事して」


そう言われてコピー室を追い出されてしまう…
………使えない後輩って思われた！？！？
取り敢えずすぐに自分のデスクに戻り急ピッチで終わらせる。
先輩にそんなふうに思われたくないっ！！







なんとか先輩に頼まれてた仕事を終わらせて、先輩に提出しに行く。
先輩はまたメガネを光らせながら私の書類に目を通す。
………ドキドキするな…でもちゃんと直したし、大丈夫、なはず…


ぱっと目線を上げる先輩と目が合う。


「やれば出来るやん」

先輩はそう言って少しだけ口角を上げると お疲れ、と肩を叩いた。

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