嘘ツキガール。

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その日から私は今まで以上に自分の容姿に気を使った。
外に出る時だけでなく、家の中でも人と会う時には必ずメイクをすることにした。
それに対して彼は満足そうに笑う。
それで良かった。必死だった。
彼に愛されるために、そしてまた私に煙草を向けられないように。
今思えば、前者よりも後者の気持ちが強かったかもしれない。
それでも、この時の私はメイクした私を綺麗だと褒めてくれて、それが私の中での彼が私を愛してくれている基準になっていた。


これで私は幸せになれると感じていたんだ。
自分を押し殺して、メイクで塗り固めて、本当の自分が見えなくなってしまっても。
自分自身が愛されていれば良かった。




でも、違った。









「おい、A。お前また外で俺の友達に会ったろ？」
『え？あ、うん。たまたま買い物中に…でも今は基本メイクしてるし、その時だってちゃんとメイクしてたよ？』
「そうじゃねぇだろ」




そう言って彼はイライラ様子でまた煙草に火をつける。
慌てて私はその時の事を思い出した。
確かにこないだ彼の友達には偶然会った。
でも、以前のような失敗はしていない、はずだ。




「口説かれてたんじゃねえか？」
『え、いや、そんな…ちょっとしつこくいい纏われたけど、私ちゃんと、断った…し…』




そう言って彼を見据えても、彼の目は私をキツく睨んでいて、思わず後ずさった。
苛立ちを表すようにZIPPOの蓋をカチン と開け閉めをする音だけが響く。
口に加えてた煙草を手に挟むと、そのままふーっと煙を吐き出す。
その瞳を向けられているのが怖くて、そっと顔を伏せると、彼が立ち上がったのが分かった。
私も立ち上がろうとしたけど、遅かった。









気付けば私はベッドに押し付けられていた。
身動きを取ろうとしても、彼の力は強くて適わない。
そっと彼の目を見ようと視線を上げると、今までにないくらい冷たい瞳をしていて、
そのままグッと首を押さえ付けられ鎖骨を晒される。
涙だけがボロボロと重力に従って落ちていく。









彼の片手には先程の火のついた煙草が握られていて。









『ごめんなさい…！』








そう叫んだ時に目が覚めて、ふと気が付くと隣にはとしみつくんがビックリした顔をしていて、私の顔を見ると悲しそうにその綺麗な顔を歪めてそっと頭を包まれた。

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