−風見鶏− 【 Ｊ 】

４０．祭りにて ページ40

「よっ！」

奈々が俺の肩を叩いて挨拶した。


　


「よっ！仕事お疲れさん。
よくこんだけの人混みで俺がわかったね？
俺を探せずで携帯がかかってくるかと思って、待ってたのにさ。」

「遠くからでも、カバディの顔の濃さは目立つんだって。」

「はっ！？お前、それ失礼だろ！」


　
奈々の頭を小突く。

からかわれたら、奈々に何かしらの仕返しをする。

昔の懐かしいパターンだ。


　


　


「大倉のいる矢倉付近に行ってみる？
和太鼓の音が聞こえ始めてたから、もう叩いてっかも。」

「うん、そうだね。あいつの勇姿を見てやるか！」


　


　

何気ない会話をしながら、矢倉目指して歩き始めた。


　


高校時代の思い出。


大倉と最近久しぶりに会った日のこと。


奈々の仕事の話。


今日は祭り気分だったから、犬にアサガオ柄のリボンを付けてきたってさ。


　

懐かしさと、新鮮さとで。

奈々との会話は弾んだ。


　


　


でも、歩いているうちに、

どんどん、どんどん人が多くなってきて。


　


　


肩ぶつかるし、

時折俺自身が流れに逆らって歩いてるしで。

必死に歩いて、ふと横を見たら奈々がいなくて。


　


　

焦って、

「奈々ーーーーー！？」

と呼んだら、

人混みにまみれてる中で手を振る奈々がいた。


　


　

奈々がこっちに追いつくと、肩で息するくらい必死に歩いてきたようで。


　

声も絶え絶えに、

「今年・・・人が・・・多すぎだよ・・・。」

と不満を漏らした。


　

疲労と苛立ちで目が据わってる奈々を見て、思わず吹き出してしまった。


　

「ちょっと、何で笑うの〜！？カバディに追いつくのが必死なんだから。」

「ごめんごめん、歩くペース落とすわ。」


　


何気ない俺の発言に、

奈々が「ありがとう」って柔らかい笑顔で返した。


　

意表をつかれた笑顔っつーか。

少しトクンと鳴ったのは、認めなたくねーな。


　


　

　


　


　

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