−風見鶏− 【 Ｊ 】

２６．来訪者　　 ページ26

泣きじゃくるAの頭を撫でながら落ち着くのを待つ。


気持ちが本気。
お互いに素の部分に触れてしまったらさ。


もう後戻りはできねーんじゃねーかって。


　

　


　

こうなりゃ不毛な恋愛、


　
堕ちるだけ堕ちてってやろうじゃねーか。


　

　

　

　

Aの頭に顎を乗せて、
愛しさこみ上げて髪を撫でてた手を背中に回したとき。


「松本様ーーーー！」


使用人の声が遠くから聞こえてきた。


驚いて体がビクッと反応した。


そんな俺を見たAは、目が真っ赤な状態。


「ここにしばらくいろ。そして落ち着いたら部屋に戻るんだぞ。」


Aが頷いたのを確認して部屋を出た。


　


　


　


　

　

「松本様ーーーー！」


「ここだ！どうした。」


「二宮様が松本様をお探しです。」


「二宮様が？」


あいつが俺を？
翔様じゃなくて？


「・・・わかった、どちらにいらっしゃる？」


「ここ、ここだよーん。よっ、Ｊ！！」


二宮の坊ちゃんが遠くから手を振りながら少しずつ俺に近づいてくる。


使用人は俺に頭を下げその場を去った。


　


　


　

「いや〜、Ｊを探して探してさ、大変だったわ。」


「ワタクシに？ですか？」


「そう、あんたに。」


坊ちゃんよ、
笑顔ってのは目も笑って初めて笑顔っつーんだよ。


口角だけ上げたって、
ケンカ売られてるように思うっつーの。


　

　

　

「何の御用でしょうか？」


「あのさ、フジコ知らない？」


「え？藤崎・・ですか？」


「そう、フジコ。
だって翔さんもいないしさ、あと聞けそうなのはフジコなんだよね〜。」


「藤崎は、しばらく業務から外れてますが。」


「はっ！？何でだよ！」


「櫻井家の諸事情とだけ簡潔にお伝えしておきましょうか。」


藤崎がとある事情で別荘に飛ばされてるなんて、
俺から二宮の坊ちゃんに言ったところでね・・・。


「藤崎にご用事だったのでしょうか？」


「あぁー・・・・・。
そう・・・なんだけどね・・・。」


坊ちゃんは顎を摩りながら『困ったなー』と言わんばかりの表情で遠くを見つめていた。


「申し訳ございません、それではこれで失礼します。」


　


　


この場を去ろうと数歩歩いたとき、後ろから声をかけられた。

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