−風見鶏− 【 Ｊ 】

２０．いつもの風景・・のはず ページ20

朝の櫻井家の風景。
それはなんて事ない、いつもの風景だ。


　
何かあったといえば・・・。


　
俺の誤算によるダメージが想像以上ってことだろうか。


　
それでも、俺はいつも通りを装う。


　
朝食時も毎度の会話を旦那様とするし、
Aにもいつも通り、旦那様の帰宅時間を告げる。


　

　

　

危機一髪なあの事件を機に、
Aの表情が昔のように再び不安気に固くなっているのは、
当然気づいている。


　
気付いてんだけどさ。


　
　

　

　

固い表情でAは小指で唇を、


トントントン


弾いたけれど、


　

　

しばらくは会わない方がいいんじゃないか。


また俺はヘマすんじゃねーか。


そう思って俺は、その合図をわざと見なかったことにした。


　

　


俺としたことが、怖気づいてる。
たかだかあれぐらいの出来事なのに。


　


今までの計算が狂い、誤算が生まれてしまった俺って。


自分でも笑っちまうくらい、焦ってやんの。


自分自身に鼻で笑いたくなるわ。


　


　


　


　


　

そして、今日は翔様の付き人として徹するように気持ちを切り替える。


　

車に翔様を車までお連れしたとき、
今までも度々翔様の様子がおかしいと思ったことはあったが。


　
今日ほど、様子プラス言動も不穏な翔様は珍しい。


　
「なぁ、松本。」


　
声のトーンが重い。


探るように返事する。


「はい」


「藤崎さん・・・なんか様子が変じゃないか？」


　

　

・・・変？
・・・・・変だったか？


いつものように仕事をこなしていた彼女に、異変は感じなかったが。


翔様が言うに、「今日一度も笑ってない」と。


そんな些細な変化を感じ取れるくらい、藤崎のことを見てるのか？


　


　

翔様？
相手は使用人ですよ？


翔様にゲームを仕掛けたのは俺だけれども・・・さ。


身分の違い云々では俺も強くは言えねーけどさ。


いやいや、これ、翔様、もしかして・・・マジか。


　

　

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