−風見鶏− 【 Ｊ 】

１．俺の仕事−１【Ｊ】 ページ1

「おはようございます、旦那様。」


「ん・・・んー。もうそんな時間か。おはよう。










執事＝「バトラー」と呼ぶ。
これ、俺の仕事。







俺の一日の始まりは早い。








旦那様を起こす前に、


１．運ばれて来た朝食のチェック
２．服の候補を何着か選ぶ
３．旦那様が必ず見る新聞数冊にアイロンをかけて、キレイに並べる。


この３つは決して欠かさない。


フットマン(従僕)達の働き具合も見つつだから、
正直言うと、俺の目は２個じゃ足らないくらいだ。


落ち着いてる顔をしてるけれども、
常に頭の中では、先を先をと考えながら行動している。









旦那様が朝食を取りながら、いつも俺に聞くことがある。


それは、今日の天気と。
体調の確認と。
経済の動き。株だ。






「本日の為替の動きは、特に荒れそうな流れではございません。」


「そうか。為替が荒れることほど怖いことはないからな〜。」









この朝の会話、もう何年やってるだろうか。









バトラー学校を卒業したにも関わらず雇い手がなく、
この櫻井家のフットマンが募集していたので、
とりあえず職にありつけるためと櫻井家で働き始めた。









執事がしてはいけないルールというものがある。


執事は結婚と借金はご法度である。
借金は、まぁーわかるとしてだな。

雇い主の本音としては,
執事に結婚をして欲しくない。


なぜなら。


妻子を持てば、忠義を尽くす対象が主人と執事の家族に2分されてしまうからだ。


だからと言って執事全員が結婚しないわけではなく、
結婚もして執事職も行う者もいるのがだ、それは稀な話。


自分の生活よりも主人の生活を優先させるため、
家族からの不平不満は必須。


やはり執事は独身向きの職業なのかもしれない。
だから、今の俺にとっちゃ、正直なところ天職に感じている。

　


　


　

色んな諸事情もあって、前任の執事が辞めるときに、
たまたま旦那様のおメガネにかなったわけだ。

　

　

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