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『もも、か…』
復唱するように、名前を読んだ。
頭痛も治り、顔をあげれば、桃色の頰は青く染まり、だらだらと冷や汗を流す、百華の姿があった。
「…ち、が…違い、ます…私は…そんな、名前じゃ…」
頭を抱え、一歩、また一歩と後退する彼女を見て確信した。
やはり、記憶を思い出すと、必要以上に否定する。
雪菜の件もあるし、私が記憶を思い出すことで、困ることが何かあるんだ。
『…ええ、百華ってどなたですの?』
「え…?」
『貴女が言ったんじゃないの、百華は傷ついたんです、と』
「ぇ、あ…えっと…」
『何だか変よ、急に人の名前呼んだり、そんな慌てたり、何かあったの?』
「い、え…何も…」
『そう、なら早く行かなくては、そろそろ皆さんも着く頃でしょうし』
「…はい」
もう一つ気づいたことがある。
今まで違和感を抱かなかったが、私はヒロイン達の名前を知らない。
そして、今私が記憶を思い出したのは、百華が自分の名前を言ったから。
つまり、名前を知らない=私の前世の記憶に関係があり、まだ思い出せていない人物、ということになる。
『ロボロ様とは、仲良く過ごせているようで良かったわ』
「まあ…ロボロ様は、お優しいので…」
『そんな照れなくても良いのに』
「て、照れてません!」
あの反応からして、百華は前世の記憶が元々あるようだ。
多分、雪菜も。
それも、きっと私のように曖昧じゃなく、しっかりと、鮮明に思い出せるほどに。
その上で、私に思い出して欲しくないならば、確実に私の前世に何かがあったのだろう。
『喧嘩するほど仲が良いって言うものね』
まさか、前世でも二人が恋人だとは思わなかった。
…もしかして、ヒロインだけじゃなく、幹部も、私の前世に関係している人物、とか?
あれ、そう言えば、雪菜の彼氏って、一度しか会ったことないから、記憶が戻っても気づかなかったが、ひとらんらん様じゃないか?
…大体わかってきた。
『…まるで、運命ね』
「?」
ヒロイン達と、婚約者である幹部達。
前世でも、同じ組み合わせで恋人関係だったんじゃないだろうか。
…そうなると、前世の私の周り、リア充しかいないじゃないか、きっつ。
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五千時(プロフ) - のんさん» コメントありがとうございます!凄く嬉しいです!励みになります〜!更新頑張ります!! (2020年4月16日 19時) (レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - このお話最高です!推理要素もあってとても楽しめます。今ある話まで一気読みしちゃいました笑更新頑張ってください!! (2020年4月16日 18時) (レス) id: abc489c33a (このIDを非表示/違反報告)
五千時(プロフ) - Black Aliceさん» コメントありがとうございます!夢主以外の視点も書きます!近々その話が出ると思いますのでお待ち下さい! (2020年4月13日 19時) (レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)
Black Alice(プロフ) - とても面白い小説に巡り会えたと心から思える程、面白かったです!1つ質問なのですが、夢主以外の視点は書いたりしますか? (2020年4月13日 18時) (レス) id: 10501c80b3 (このIDを非表示/違反報告)
五千時(プロフ) - ゆうさん» コメントありがとうございます!いやぁぴくとさん黒幕で使うの夢だった…!更新頑張ります! (2020年4月12日 22時) (レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:五千時 | 作成日時:2020年3月30日 22時