【d!】転生したけど思ってたのと違う！【gr】

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可笑しいなんてもんじゃない。
貼り付けた愛想笑いが、ここまで恐ろしいと思ったことはない。
こんなにも近くにいるのに、まるで、声も届かない遥か遠くにいるかのようだ。


『っ…！』

「わっ…！？」


桃色の腕を無理矢理振り解き、急いで食堂から出た。
あんなにも、死んだ目を見たのは初めてだ。
諦めだ、断定だ、哀れみだ。
彼女達の瞳から感じられたものは、とても肯定の意味を持つ言葉に置き換えることなどできない！


『可笑しい…こんなの、何が、何を…』


わからない。
自分が、何に、ここまで、恐怖を抱いているのか。
こんなの、可笑しいのは私も同じだ。
…そうだ、よく考えてみれば、私は、あの子達に嫌われようとしていたにも関わらず、何処か抵抗があった。
彼女達の幸せを望んだ結果だったはずなのに。
まるで、それが間違いだと、断定しているようだ。


『…可笑しい…？違う、そんな生優しいものじゃない…これは、異常だ…』


何か、それがわからない。
確かに、何かが存在していて、それが全ての答えだというのに。
わからない、どうして、どうしてわからない。
何故、わからないものを、どうしてわかろうとする？


『…これが、正しいこと…これが、私の、するべきことなの…？』


あんなにも恐ろしい、死んだ目をしなくてはいけないほど、追い詰められて彼女達を、私が、壊すのか。
この世界が、例え乙女ゲームだとして、私の役割が、ハッピーエンドに必要な最大の鍵だとして。
…ヒロインが壊れたとして、それの何処がハッピーエンドなのだろうか。


『…』


素直になろう。
私はあの子達が好きだ。
あの子達が幸せになるのならば、この身を投げ打ってでも、悪役を演じようとしたが。
それが、彼女達を幸せから遠ざけるものだとしたら。
そんなことが、あってはならない。
私は…、私は、ヒロインでも悪役令嬢でもない。


『やってやろうじゃないの』


このゲームの主役として、私の望むハッピーエンドを目指してやろうじゃないか。









.







「あらあら、名家のご令嬢ともあろう方が、威勢のよろしいことで」


そして、私の敵は、紛れもない、この人だ。


「邪魔なのよ、貴女達全員、私の作り上げた楽園を、返して貰えるかしら」

『随分と脆い楽園をお作りになっていたようで、修復するのに、そんな手荒では、また直ぐに崩れてしまうでしょうね』

「…口だけのくせに、生意気ね」


私の望むエンドに、この人は、いらない。

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