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『…はあ』


漏れたため息に、本音が乗って、思わず全て吐き出してしまいそうになった。
幸せなこの生活に、記憶がある分、やはり違和感というか、窮屈さを感じていた。
籠の鳥だなんて、そんな御伽話のような酷いものではないが、前世のような完璧な自由を、自分の意思を、この世界で、私は持てていなかった。


『何やってるんだろう、私…』


つまらなかった。
転生する直前、神を名乗る人に告げられたあの言葉。
結局、私に待つのは悪役令嬢として、嫌われ恨まれる未来なんだと思うと、途端に、大袈裟かもしれないが、今自分が何の為に生きているのか、分からなくなっていた。


「こんばんは」

『…!』

「夜風は冷えませんか」

『も、申し訳ありません…!はしたないところをお見せしてしまい…!』

「ああいや、お休みのところお邪魔してしまったのは私の方ですから、頭をあげてください」


穏やかな声で話すその人は、月のように綺麗な髪で、その上、その瞳は赤く燃えるような赤だった。
とても、美しい人だった。
着ている服は軍服で、軍国の人だということは一目で分かった。
軍国にとって、一番の正装は軍服だと聞いていたが、初めて見る服装に驚いていた。


『…姉の付き添いで参ったのですが、少し気疲れしてしまいまして』

「そうですか、私も、あまりこのような場は得意ではなくて、抜け出してきたところです」

『そうなんですか、確かに、軍の方はあまりパーティーにはご出席されませんものね』

「ええ、貴女は、パーティーはあまり参加されないんですか」

『ここまで大きなパーティーひ初めてです、今も、かなり緊張してしまっていて…』


跳ねる心臓を抑えるように手を当て、はにかんだ。
すると、頬に、その人の手が触れた。
驚いて目を開けば、彼は既に、鼻がくっついてしまいそうなほど近い距離まで迫っていた。
突然のことで驚きながらも、顔を逸らして、その人の肩を押した。


『婚約前の火遊びは、あまり関心致しません、今日、私はパーティーの主役として参加しているのではないので、申し訳ありません』

「…残念だ、今すぐ君を、妻として迎えられないとは」

『私よりも素敵な女性と、貴方が巡り合えることを祈っております、では』


目をつけられたか。
姉にバレたら、はしたないと怒られてしまう。
だから、彼に向けて、また何処かで、とは言わずに、背を向けて去ったのだ。

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五千時(プロフ) - のんさん» コメントありがとうございます!凄く嬉しいです!励みになります〜!更新頑張ります!! (2020年4月16日 19時) (レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - このお話最高です!推理要素もあってとても楽しめます。今ある話まで一気読みしちゃいました笑更新頑張ってください!! (2020年4月16日 18時) (レス) id: abc489c33a (このIDを非表示/違反報告)
五千時(プロフ) - Black Aliceさん» コメントありがとうございます!夢主以外の視点も書きます!近々その話が出ると思いますのでお待ち下さい! (2020年4月13日 19時) (レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)
Black Alice(プロフ) - とても面白い小説に巡り会えたと心から思える程、面白かったです!1つ質問なのですが、夢主以外の視点は書いたりしますか? (2020年4月13日 18時) (レス) id: 10501c80b3 (このIDを非表示/違反報告)
五千時(プロフ) - ゆうさん» コメントありがとうございます!いやぁぴくとさん黒幕で使うの夢だった…!更新頑張ります! (2020年4月12日 22時) (レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:五千時 | 作成日時:2020年3月30日 22時

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