3 ページ3
『…はあ』
漏れたため息に、本音が乗って、思わず全て吐き出してしまいそうになった。
幸せなこの生活に、記憶がある分、やはり違和感というか、窮屈さを感じていた。
籠の鳥だなんて、そんな御伽話のような酷いものではないが、前世のような完璧な自由を、自分の意思を、この世界で、私は持てていなかった。
『何やってるんだろう、私…』
つまらなかった。
転生する直前、神を名乗る人に告げられたあの言葉。
結局、私に待つのは悪役令嬢として、嫌われ恨まれる未来なんだと思うと、途端に、大袈裟かもしれないが、今自分が何の為に生きているのか、分からなくなっていた。
「こんばんは」
『…!』
「夜風は冷えませんか」
『も、申し訳ありません…!はしたないところをお見せしてしまい…!』
「ああいや、お休みのところお邪魔してしまったのは私の方ですから、頭をあげてください」
穏やかな声で話すその人は、月のように綺麗な髪で、その上、その瞳は赤く燃えるような赤だった。
とても、美しい人だった。
着ている服は軍服で、軍国の人だということは一目で分かった。
軍国にとって、一番の正装は軍服だと聞いていたが、初めて見る服装に驚いていた。
『…姉の付き添いで参ったのですが、少し気疲れしてしまいまして』
「そうですか、私も、あまりこのような場は得意ではなくて、抜け出してきたところです」
『そうなんですか、確かに、軍の方はあまりパーティーにはご出席されませんものね』
「ええ、貴女は、パーティーはあまり参加されないんですか」
『ここまで大きなパーティーひ初めてです、今も、かなり緊張してしまっていて…』
跳ねる心臓を抑えるように手を当て、はにかんだ。
すると、頬に、その人の手が触れた。
驚いて目を開けば、彼は既に、鼻がくっついてしまいそうなほど近い距離まで迫っていた。
突然のことで驚きながらも、顔を逸らして、その人の肩を押した。
『婚約前の火遊びは、あまり関心致しません、今日、私はパーティーの主役として参加しているのではないので、申し訳ありません』
「…残念だ、今すぐ君を、妻として迎えられないとは」
『私よりも素敵な女性と、貴方が巡り合えることを祈っております、では』
目をつけられたか。
姉にバレたら、はしたないと怒られてしまう。
だから、彼に向けて、また何処かで、とは言わずに、背を向けて去ったのだ。
1684人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
五千時(プロフ) - のんさん» コメントありがとうございます!凄く嬉しいです!励みになります〜!更新頑張ります!! (2020年4月16日 19時) (レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - このお話最高です!推理要素もあってとても楽しめます。今ある話まで一気読みしちゃいました笑更新頑張ってください!! (2020年4月16日 18時) (レス) id: abc489c33a (このIDを非表示/違反報告)
五千時(プロフ) - Black Aliceさん» コメントありがとうございます!夢主以外の視点も書きます!近々その話が出ると思いますのでお待ち下さい! (2020年4月13日 19時) (レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)
Black Alice(プロフ) - とても面白い小説に巡り会えたと心から思える程、面白かったです!1つ質問なのですが、夢主以外の視点は書いたりしますか? (2020年4月13日 18時) (レス) id: 10501c80b3 (このIDを非表示/違反報告)
五千時(プロフ) - ゆうさん» コメントありがとうございます!いやぁぴくとさん黒幕で使うの夢だった…!更新頑張ります! (2020年4月12日 22時) (レス) id: 76bb208c06 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:五千時 | 作成日時:2020年3月30日 22時