煙の中 ページ3
｢お姉さん名前なんて言うの?｣
｢私は…アリス。｣
私は来須莉亜だけど、今はこう名乗るのが正解だと思ったの。
｢あなたは?｣
｢ボクは江戸川コナン。｣
｢そう。コナン君ね。｣
気まずい沈黙。
エレベーターはのろのろと上がっていく。
｢アリスお姉さんはなんで上の階に行こうと思ったの?爆発音もしたでしょ?｣
｢さあ、なんでかしら。でも、それを言うならあなたもよ。｣
明らかにギクリとして、あはは…と誤魔化した。
しばらくして、エレベーターが止まった。
｢爆弾を止める手立てはあるのかしら?｣
｢場合によるけど、多分。｣
2人は、一歩を踏み出した。
♠♢♡♧♤♦♡♧♤♢♥♧♤♢♡♣
｢どこかしら。派手な爆発だったからすぐに見つかると思うのだけど。｣
｢あっちだ。火薬の匂いがする。｣
そう言われて匂ってみれば、かすかに火薬のような匂いがした。
でもパーティー会場で轟音や振動を感じた割には、フロア全体は崩れていない。
何故だろうか?
まあそれは現場に行けば分かること。
アリスは走り出した。
走り出しても、息は切れない。
いくらでも走れるなんて都合のいいことは現実では起こりやしない。
いえ、そうね。
私はずっと夢の中にいるってことね。
微笑んで、駆けだした。
角を曲がった先に、コナン君はいた。
この階で一番大きな部屋のドア、その目の前で聞き耳を立てていた。
｢ねぇ…｣
話しかけようとすると、人差し指を立てて私を見た。
静かにした方がよさそう。
そっとドアを開け、その隙間から覗く。
中には人影が…
猛烈に嫌な予感がした。
すぐさまドアからコナン君をひっぺがして、距離をとった。
ピーと機械的な音が鳴って、次の瞬間、ドアが吹き飛んだ。
｢ぐっ……!!｣
爆風からコナン君を庇った。痛みはそんなに感じない。
煙が充満する。
すると、
｢おや、アリスではないか。｣
煙の向こうの人物が言う。
｢あなたは誰…?｣
｢白ウサギだ。分からないかね。｣
まるで私を知っているような口ぶり。
でも私はこの世界に来る前はただの一般人。
この男を見たことはない。
どういうこと?
煙が晴れ、姿が見えた。
白いウサギのお面を被った長身の人物がいた。
｢私は爆弾魔。きっとまた会うだろう。｣
白ウサギはパチンと指を鳴らして、消えた。
｢っ待って!｣
その部屋には鏡があった。
それを見た瞬間、鏡の中に引き込まれたのだ。
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