夢の中 ページ1
フリルと青のエプロンドレス。
アリスは駆けてゆく。
白ウサギを追いかけて。
時計を見ながら走る白ウサギは急ぐ。
さて、どこへ？
さて、なぜ？
さて、だれ？
さて、あなたはだれ？
不思議の国へ行くの。
私は追いかけなくちゃいけない。
私はアリス。
不思議の国のアリス。
白ウサギを追いかけた先には何がある？
トランプのカード。
喋る花。
ティーパーティー。
なにが違う？
どれも違う？
だれが違う？
考えてみれば簡単なことだ。
───── 私はアリスじゃない。
リンリンリンリンと鳴り響くものは本当にベルだろうか。
いや、違う。
アラームだ。
アラームって何だっけ？
常識を忘れた頭はぐるぐるぐると回り続けた。
ぽつりと一つの考えが頭の中を滴り落ちた。
───────そろそろ起きる時間だ。
起きて最初に考えたのは、目覚まし時計のこと。
次に、今日会社でやるべき仕事。
そして、
｢アリス…｣
いやいや、私はアリスじゃない。
私は
何となくそんな夢を見た気がしただけ。
ふう、とため息をついて起き上がった。
さて、顔を洗わなきゃ。
寝室を出てすぐの洗面所に向かう。
ふらふらとした足取りで向かった洗面所は何も変わったところはない。
そう、ただの夢だった。
目が半開きの眠そうな私が大きな鏡に映る。
__________一転。
瞬きをした次には、鏡の中に私はいない。
｢アリス…｣
アリスのぱっちりとした目と私の目が合った。
夢じゃ、ない。
いや、まだ夢の中なのか？
鏡の向こうのアリスはこちらにするりと手を伸ばす。
不思議なことにその手は鏡の境を越えた。
その手に触れた瞬間、私は鏡に引き込まれたのだ。
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