全力疾走

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「ホンマ、ええ加減にせぇよ！

俺が何回メッセージ送った思うとんねん！

電話もやで？！


途中から自分でもストーカーか？！思ったわっ！」


ベッドの上で胡座をかいて、ご立腹のリョウくん。

パソコンデスクの椅子に座るあたしを、拗ねたように睨んでいるけれど、


「ーーハイ、ゴメンナサイ…



あの…
とりあえず、パンツ、履いてくれませんか？」


話に集中出来ません…







「挙句に、知らん男と抱き合っとるって、マジ何やねんっ…」


下は履いてくれたけど、上半身はまだ剥き出しのまま、また薄っすら涙目のこの人は、可愛いが過ぎると思う。



こんなに可愛く拗ねられると、危うく全部あたしが悪いような気もしてくるけど、

そもそも事の発端は、ソッチだし！



「ーー週刊誌の記事、ネットで見ました。

あたし、結局、リョウくんの何…？」


彼女？

浮気相手？

もしかして、単なる不健全なオトモダチ？



「何でそんなん言うん？！

彼女に決まっとるやろ！


ーー記事、ちゃんと見ろや…

写真、半年前のやってぇ。
元カノとまだ付き合っとる頃のやつ。

何で今更あんな記事になったんか分からんけど…」



鞄から例の週刊誌を取り出して渡された。



確かに…


写真をよく見ると、写真の女性はコートを着ていない。

リョウくんらしき人は、Tシャツ姿。


どう見ても、この季節の服装ではなかった。




終わった恋愛が時間差で記事にされる事は、芸能界ではままあることだと顔をしかめるリョウくん。



でも、それじゃあ…


「ーーカノジョ…元カノさん、今すごく困ってるんじゃないの…？」

別れた後に、こんな記事。

しかも相手は一般人でしょ？

大丈夫なんだろうか…



「おん…せやねん…
アイツには、ほんま迷惑かけてもうたわ…


ーーやけど、ほんまは、正直、ホッとした。」


「え？」


「撮られたんが、Aやなくて、よかった…」


「ーー・・・」


「Aはまだ、そういう覚悟、出来てへんやろ…？」


眉を下げたその顔は、少し寂しそうで、


だけど

「そんな事ない」とは言えなくて。




もし、撮られたのが自分だったら…？


あたしの生活はどうなっていたんだろうか。


あたしは分かっていなかったのだ。

あなたと一緒にいるには、

そういう覚悟が必要なんだって事を。




ーーだけど・・・




「ーーもう、俺とおるん、嫌んなった…？」


少し震えて響いた声。


あたしを見上げるその目。




手放せるはずもない。

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