時計の針は戻せませんが（緑）

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やっちまったよ、ワンナイト。

で、終わる出来事だった筈が、その１週間後、普通に送られてきた“大熊”からのメッセージ。


『ヒーマー！
家行ってもええ？』

どういうつもりだ？

と思いつつ、ちょうど仕事を終え、後は特に予定もない金曜の夜。

しかしながら、朝出てきた時の部屋を思い浮かべれば、とても人を上げられる状態ではなかった。

『暇だけど、ウチはダメ、汚い。
お腹すいた。』

ご飯なら付き合ってあげるけど、やりたいだけなら他を当たれ。

そんな意味も込めての雑な返信に、

『じゃあ、焼き鳥でええ？現地集合な』

お店の情報がポンと飛んできた。

あ、この店、気になってた所だ！

なんてテンションを上げてお店に向かったあたしは、そのままの勢いで、この間違いだらけの関係に突っ込んでいってしまったのだ。



月に数回、食事をしたり、家で飲んだり、たまに身体を合わせたり。

そんな関係を半年以上続け、

「好きだ」とか「付き合おう」なんて言葉はないものの、大人の恋愛ってこういうものなのか？

何ていう盛大な勘違いをし始めたある日の朝食タイム。

何気なくつけた朝の情報番組で流れた７人組アイドルの新曲ＰＶに、よく知る顔を見つけた時の衝撃を忘れることはないだろう。


大熊ただよし

IT関係の会社勤務


あたしの知る彼の情報とは全く異なる筈なのに、画面の中でキラキラと笑顔を振りまくその人の顔面は、どう見ても一致していて。


『腐れアイドル！』


もしかしたら、他人の空似だったりしないだろうか。

『いきなり何やねん？？』
なんて返事を、心のどこかで期待しつつ、勢い任せに送ったメッセージ。


しかし、現実はまぁまぁしょっぱくて。

既読のつかないまま半日以上放置の挙句、諦めて就寝態勢に入った23時過ぎ。

『バレたか〜笑』

何のうしろめたさも持たない潔いい程お軽い返信が帰ってきた時、

やっと自分の盛大な勘違いに気付いた。



そして、自分が思っていたよりも随分と、その気になってしまっていたらしい。

勢いよく溢れ出した涙と鼻水の成分の大半が、

怒りや悔しさよりも、

悲しみだったから、

気付いていなかった自分の想いを無理やり目の前に突き付けられた。

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