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出会ってから絶交するまで、4回巡って来た誕生日。
思い返せば、なんだかんだといいながら、忠義は毎年ちゃんとお祝いしてくれた。
当日が叶わない時には前倒しで。
「誕生日のタイミングでいつも独り身って、俺のこと欲しがり過ぎやろぉ?」
いつも通り小馬鹿にしたような言い回しだけど、それなりに愛情がこもってるんじゃないかと錯覚してしまうような、あたたかい目で、優しい掌で、その日は必ずあたしを包んでくれた。
久しぶりに過ごす独りの誕生日。
他の誰かと予定を入れる気持ちにはなれなくて、自ら選んだ独りの誕生日だけれど。
「やっぱり、友香とハルくんにお祝いして貰えばよかった…」
一気に押し寄せてきた孤独感と切なさと、そして愛おしさに、自分の強がりを後悔した。
不意に震えたスマホ。
知らない番号からの着信を知らせる画面を確認して、無視を決め込むと、そこそこしつこく震えてから、静かになった。
そしてまたすぐに同じ画面を映して震えだすスマホ。
仕方なく通話をタップし、
「はい、高橋です。」
一応先輩や上司からだったパターンも想定して、仕事モードで応答した。
「ーーーー。」
って、無言電話かよ!
と通話を切ろうと思ったら、微かに聞こえる関西訛りの話し声。
「高橋さんて言うとるけど、あってるん?」
「ヤス!何勝手にかけとるんよ?!」
「やって、おーくらがいつまでもウジウジ携帯とにらめっこしとるから、手伝ったったんやん!」
「心の準備っちゅーもんがあんねん!」
「ヘタ倉!」
ーーーー・・・
聞き覚えのない少し高めの声と、嫌という程聞き覚えのある低い声。
仲よさそうに電話の向こうでじゃれ合っている様子が伝わってくるよ。
通話相手は置き去りだけどな!
ーーとりあえず、切ろう。
終話ボタンをタップして、一呼吸。
どういうことだよ?!
視線を落とせば、スマホを持つ手がみっともなく震えていて、耳に残る1ヶ月ぶりの声に、実は凄く動揺していると気づかされる。
何で、今更。
何で、今日。
あたしの震えを掻き消すように、手の中で振動を伝えるスマホを眺めて、思い知るのは、まだ何にも整理できてなかった自分の気持ち。
「ーーもしもし…?」
通話ボタンを押してしまった自分は、相変わらず忠義の掌の上で踊らされているんだろうな…
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まめまめた(プロフ) - ゆうきさん» コメントありがとうございます!クリスマス時期に小話を書きたいなぁなんて実は思ってたのですが、間に合わず(;´д`)またイベント時期に、続編、チャレンジしてみるかもです!その際は、また遊びに来てください☆ (2017年12月27日 20時) (レス) id: 955d73cb24 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - 面白かったです。続編、書いてほしいです。 (2017年12月24日 17時) (レス) id: cd0c82d3f8 (このIDを非表示/違反報告)
まめまめた(プロフ) - ぽぽこさん» コメントありがとうございます!素晴らしいなんて、畏れ多い( ;´Д`)でもとっても嬉しいです。また新作が出来ましたら、是非遊びに来てください!ぽぽこさんの作品も拝見しました!大好きな青さんにキュンです(〃ω〃) (2017年12月6日 12時) (レス) id: 955d73cb24 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽこ(プロフ) - 素晴らしい作者さんに会えたと感激してます。ありがとうございます! (2017年12月6日 11時) (レス) id: 46ab68036d (このIDを非表示/違反報告)
まめまめた(プロフ) - マッキーさん» コメントありがとうございます!大倉くんの魅力が伝え切らなかったかな?と自信なかったので、面白いと言っていただけたて嬉しいです(≧∀≦)また機会があれば、大倉くん作品がんばります☆ (2017年12月1日 9時) (レス) id: 955d73cb24 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめまめた | 作成日時:2017年11月22日 21時