コトノハ（∞）

・・・・・・ ページ32

「ーー信じられない…
言うに事欠いて、何その言い訳。」


怒りを通り越して、呆れるしかない。


「っ、言い訳とちゃうって！
ほんまやねんからしゃーないやろっ」


それなのに、まだそれを押し通そうとする裕に、やっぱり腹が立って、


「じゃあ、このストッキングは何なのよっ？！
これも自分のだって言うわけ？」


ゴミ箱から例の破れたストッキングを取り出して突き付けたら、


「それも俺のじゃ！」


と顔を真っ赤にしながら、胸を張って言った。




「ーー・・・」


浮気がバレそうになっても、死ぬ気でシラを切りとうせって言うけど、

それがこういうことなの？



「ーーもう、いいっ、、」


悔しさとか、虚しさとか、腹立たしさとか、哀しさとか、

とにかく、もう色んな気持ちがごちゃ混ぜになって、

視界が滲むのを感じた。


とりあえずこの場には居たくなくて、カバンを手にして帰ろうとしたあたしを、


「ちょっ、ちゃうねん！
ホンマのホンマやねんって！」


あたしの手首を掴んで、焦ったように引き留める裕の顔は真剣で、

こんなに必死な顔は見たことがない。


そんな彼の必死さに、思わず動きを止めたあたしに少し安心したのか、手首を掴む手を離すと、


「ちょっ、待っといて！」


そう言ってから、クローゼットを開けた裕は、中から信じられない物を出してきた。







「、、なに、それ…？」








裕が手にしているのは、あたしだって着たことのないような、ピンク色のピラピラしたドレス。




「ーーこれ着て、踊んねん…」



頬をピンク色に染めて、恥ずかしそうに目を伏せてそう言った裕は、

今まで見てきた中で一番可憐で、

とても３０代半ばの男の人には見えなかった。



あのピンクの口紅も、裕の白い肌にならきっと良く似合うんだろうな…


なんて思ったあたしは、

やっぱり間違いなく、呑気なのだろう。









［問３］

彼氏から女装癖を打ち明けられました。
さて、どうする？

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