コトノハ（∞）

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「ーーー・・・


、、え…？」



多分たっぷりと時間をもらった後に、やっと絞り出した声がこれだったのだが、


「お待たせ致しましたっ！」


ガラッと個室の引き戸を開けて現れた店員さんの声に、すっかり掻き消された。


「ーーあ…

えっと、ビール二つ、お願いします…」


どうにか注文を告げ、畏まりました！と元気よく退出して行った店員さんを見送った後、

再び二人きりになった部屋の中。



「…もぉ、ほんま俺、何でいっつもこうなんやろ…」


丸山くんは、地球の裏側までめり込みそうな勢いでテーブルに頭を付けていた。


「ーーあの…丸山くん…？」


「ーーちゃんと言わなって、ずっと思っててん。

けど、最初で間違えてしまったまんま、ずっと間違えっぱなしで…

やっと、やっと言えたのに…

タイミング完全に間違えてもぉたし…」


顔を真っ赤にして、頬はまだテーブルにつけたまま、あたしを見上げる情け無い程のタヌキ顔。


「っ、、好きって…」



ーーねぇ？

全然意味分かんないのに、今、あたしの心臓、壊れそうなくらいの速さで動いているんだけど…




「ーー俺、ほんまはずっと、浅井ちゃんの事が好きやってん。

けど浅井ちゃんが木村に失恋したばっかのとこに付け込むのもアカン思って。
そしたら何や分からんけど、浅井ちゃんは俺がユミちゃんのこと好きやと思ってるし…

でも何でもええから浅井ちゃんの側で元気づけられたらええや、思ってたら、

どんどんほんまの事言い辛くなってもぉて…」



丸山くんの口から語られるのは、あまりに聞き覚えのあり過ぎる話で。



「ーー嘘ついて、仲良くなって、ずっと俺のこと応援して、励ましてくれてた浅井ちゃんのこと騙してて…

ほんまにごめんっ…」



あたしに向かって頭を下げる丸山くんに、言いたい事なんて一つしかない。



「ーーあたしも…」


出てきたのは情け無い程カスカスの声。


「ーーへ…？」


だけど、負けず劣らず情け無い声が返ってきたから、

少しだけ笑ってしまって、

それからもう一度ちゃんと伝えた。




「あたしも、ずっと嘘ついてた…ごめんなさい。



ーー丸山くんが、好き、です。」







あたしからも、伝えなければ。

どこかで聞いたようなお話を。




二人揃って同じ回り道を歩いていたなんてね。





だけど、きっと丸山くんなら笑ってくれるんだろうな。



「これは、俺らがお似合いってことやんなぁ。」


って、いつもの優しい笑顔で。

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