side 安田 ページ37
彼女と言葉を交わすことなく、一次会がお開きになって、
カラオケに移動する集団からそっと抜け出したのは、
「あたしはここで〜」
と、帰路についた彼女を追いかけるため。
「浅井さんっ、」
何て声を掛けるのかも考えんと追いかけて、見つけた背中に名前を呼び掛けた。
「はい？」
振り返った彼女は、泣いてはいなかった。
だけど、飲み会の間中ずっと、
俺には彼女が泣いてるように見えていた。
「えーっと、二年の、、」
「安田です！」
「安田君。どうしたの？」
言葉も交わしたことの無い後輩に突然呼び止められて困惑している様子の彼女に、
「一緒に帰りましょう！」
と下手くそなナンパみたいな声を掛けた当時の自分を、今思い出しても恥ずかしくなる。
いきなりの申し出に目を丸くした後、
「うん？いいよー。」
と軽く返してくれたAさんは、大人やった。
「あたし大学に自転車停めてあるの取りに行くんだけど、安田君は家どこなの？」
「僕もチャリ置きっぱだから取りに行くんで。」
そんな他愛のない会話をしながらも、彼女の表情がが気になって、
盗み見をしているつもりやったのに、
「あたしの顔に何か付いてる？」
困ったように言われて、どうやらガン見していたらしいことに気付いた。
「ーー大丈夫、ですか？」
きっと今の俺やったら、もうちょい上手く話をもっていけたんやろうけど、
この時の俺には言葉が見つけられなくて、
直球しか投げられなかった。
「ん？そんなに酔っ払っていないから、大丈夫だよ。」
彼女は優しく笑ってくれたけど、そんな事が聞きたいんと違くて…
「、、無理して、笑ってませんか？」
だけど、やっぱり下手くそな直球しか投げられへんかった。
驚いたように俺を見て、
それから少し力の抜けた顔で微笑んだ彼女は、
「うん、そうかもね…」
他人事のような軽さで言った。
「もうとっくの昔に振られてるのに、案外ショックなもんだね。」
ははっ、と彼女が零した乾いた笑いが、夜の空気に溶けなくて、
いつまでも残っているような気がした。
何となく、
初めて彼女に会ったあの日、彼女は失恋したのだろうか…
と思った。
上手な慰めなんか一個も出てけぇへんくって。
馬鹿みたいに無言で、大学までの道を歩いた。
「ありがとね。」
自転車置場で優しく笑ってくれた彼女に、
結局何も言えへんまんま、
その背中を見送った。
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まめまめた(プロフ) - yuki sさん» yuki sさん☆コメントありがとうございます！きゅんきゅんお届け出来て良かったです( ´ ▽ ` ) (2019年8月1日 10時) (
レス) id: 955d73cb24 (このIDを非表示/違反報告)
yuki s(プロフ) - 可愛かったです！きゅんきゅんしました (2019年7月31日 21時) (レス) id: 420ff5d14c (このIDを非表示/違反報告)
まめまめた(プロフ) - まあこさん» まあこさん☆読んでいただけて良かった〜リクエストにお応えして書くが初めてだったので、こんな感じでいいのかなぁ？と一人でドキドキしておりました(￣▽￣;) 楽しんでもらえたなら幸いデス(´∀｀=) (2019年7月29日 17時) (レス) id: 955d73cb24 (このIDを非表示/違反報告)
まあこ - 以前にリクさせて頂いた者です！書いて下さりありがとうございます！更新が上がってるのを見てもしや！とテンションが上がり、読ませて頂いて胸がドキドキして1人で悶えさせて頂きました！(笑)悶々とする安田くんほんとに最高でした！めちゃくちゃ嬉しいです！ (2019年7月29日 13時) (レス) id: 33083b39c7 (このIDを非表示/違反報告)
まめまめた(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさん☆いよいよ大阪はじまりますねっ！たーっぷり愛を受け止めてきてください(≧∀≦) ちなみに私は自分史上最高の席で受け取った愛の余韻からまだ抜け出せてません(〃ω〃)笑 (2019年7月27日 7時) (レス) id: 955d73cb24 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まめまめた
| 作成日時：2019年6月12日 10時
