3 ページ3
「浅井さんて、そーゆーキャラなんやなぁ？」
彼の背中が店の入り口の暖簾の向こうに消えたのを見送った、ちょうどそのタイミングで、ガタッと椅子を動かす音がして。
それに続くように、投げ掛けられた言葉。
声の元を見上げれば、さっきまで彼がいた椅子に手を掛けて、あたしを見下ろす男が一人…
それは薄っすら覚えのある顔で。
「、、えっと…安田さん…？」
ーーでしたよね、確か…
恐る恐る声にした名前は、隣の課の、確か幾つか歳下の男の子。
「あ、名前知ってたんや。
営業三課の安田ですぅ。
ココ、ええよなぁ？」
と、あたしの返事を待たずに椅子に腰を下ろして、飲みかけのビールを机に置いた。
ーーえ？何この状況？！
「まだ飲むやろ？何頼む？」
ハイ、とメニューをあたしに差し出しながら大きな前歯を覗かせて、少し首を傾げたその姿は、何となく耳にしてきた評判通りの可愛らしさだ。
が、しかし、明らかに不自然なこの展開。
あたしが記憶喪失でないのならば、この人とは今まで一度も、言葉どころか視線すら交わした事はないはず。
何より、ニコニコと平和に微笑んでいるはずのこの人の目、多分笑ってないと思うんですけど…
「ーーえっと…何ですか？」
とりあえず、この状況に疑問を持たずに楽しめるような心の余裕は現在持ち合わせていないので、
正直に、��胡散臭…��という気持ちを込めて、尋ねた。
結果…
「ンー？やって、気になるやん。
一人で飲んでたら、隣の課の先輩が入ってきて、声掛けよ思ったら女連れで、しかもよぉ見たら知ってる顔で。
横ちょ、派遣さんに手ぇ付けてたんか思ったら、あらあら別れ話が始まってもぉて。
修羅場るんかと思たら、サラーっと終わってまうし。
したら、一人で残った女の子はどんな顔してるんかなぁ？て、なるやん？」
屈託のない笑顔で、シレッと簡潔に説明してくれた。
正直、期限付きの派遣社員だし、そもそも他人にさほど興味もない。
それでも耳にするくらい、この人は話題にのぼりやすい人で、
特に女性社員の皆さんは、老いも若きも口を揃えて言っていたはず。
��安田くんって、本当に可愛いよねー��
��天然で優しくて、癒し系男子だよね��
そして確か彼も、
��ヤスはめっちゃエエ奴やねん！ちょっとアホやけどな。��
そんな風に評していた。
「健気な自分に酔おてるとこ、お邪魔やった？」
ーーうん、世間の評価なんて当てにならないな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1163人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まめまめた(プロフ) - yuki sさん» yuki sさん☆コメントありがとうございます！きゅんきゅんお届け出来て良かったです( ´ ▽ ` ) (2019年8月1日 10時) (
レス) id: 955d73cb24 (このIDを非表示/違反報告)
yuki s(プロフ) - 可愛かったです！きゅんきゅんしました (2019年7月31日 21時) (レス) id: 420ff5d14c (このIDを非表示/違反報告)
まめまめた(プロフ) - まあこさん» まあこさん☆読んでいただけて良かった〜リクエストにお応えして書くが初めてだったので、こんな感じでいいのかなぁ？と一人でドキドキしておりました(￣▽￣;) 楽しんでもらえたなら幸いデス(´∀｀=) (2019年7月29日 17時) (レス) id: 955d73cb24 (このIDを非表示/違反報告)
まあこ - 以前にリクさせて頂いた者です！書いて下さりありがとうございます！更新が上がってるのを見てもしや！とテンションが上がり、読ませて頂いて胸がドキドキして1人で悶えさせて頂きました！(笑)悶々とする安田くんほんとに最高でした！めちゃくちゃ嬉しいです！ (2019年7月29日 13時) (レス) id: 33083b39c7 (このIDを非表示/違反報告)
まめまめた(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさん☆いよいよ大阪はじまりますねっ！たーっぷり愛を受け止めてきてください(≧∀≦) ちなみに私は自分史上最高の席で受け取った愛の余韻からまだ抜け出せてません(〃ω〃)笑 (2019年7月27日 7時) (レス) id: 955d73cb24 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まめまめた
| 作成日時：2019年6月12日 10時
