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side 村上
「もしもしっ!オマエなぁ、いきなし旅行て、、」
「あ、信五さん?
お久しぶりです、Aの妹のマキです。」
やっとこさAのケータイから掛かってきた電話に勢いよく出たら、Aによお似た声が遠慮がちにそう言った。
「マキちゃん?!
久しぶりやなぁ!元気しとったか?」
彼女の妹の突然の登場に驚きつつ、一応挨拶を交わしてみたが、
一体コレはどういう事やねん?
Aは妹と旅行に行っとるんか?
けど何で本人やのうて、この子から掛かってきたん?
と頭の中は疑問だらけで、そんな混乱した気配を感じ取ったんか、
「お忙しいところに突然のお電話、すみません。
実は、信五さんにお伝えしたいことがあって…
今、お電話大丈夫ですか?」
マキちゃんは遠慮がちに言うた。
その礼儀正しく落ち着いた話し方に少し驚きつつも、
そう言えばもうすぐ大学を卒業して社会人になるんやったっけ、
と時の流れにしみじみとしてもおた。
この子と初めて会ったんは、こっちの大学に進学することが決まって、一人暮らしの部屋を借りるんに俺の馴染みの不動産屋のオッサンを紹介してあげた時か…
しっかり者のAが、妹の前やとちょっと情け無い姉ちゃんになるんが新鮮やったなぁ…
なんて昔を懐かしみながらマキちゃんの話に耳を傾けていたが、
すぐに、そんな己の呑気さを悔やむことになった。
「ーーと言う訳で、連絡があまり取れないのはそういう事情ですので…」
「何でなん?!
何でわざわざそないな嘘ついてまで…」
マキちゃんの言葉を遮るようについついでかい声を出してもおたけど、
勿論、Aなりの気遣いなんやて事は分かっとる。
せやけど、到底納得なんていくはずあらへん。
やけど、そんな鼻息の荒くなった俺を嗜めるように、そして釘を刺すように、マキちゃんは静かに言うた。
「ーーお姉ちゃんの気持ちは、直接お姉ちゃんに聞いてください。
目が覚めたらちゃんと連絡するように言いますから。
…ちゃんと、話を聞いてあげて下さいね。」
お忙しいところ失礼しました、て言うて電話を切ろうとするマキちゃんを、
「ちょっ、待ってや!」
と慌てて引き止めたんは、誰より俺が一番分かっとるから。
あの我慢強ぉて、甘え下手なAが、
そんな素直に電話してくるわけあらへん事を。
「ーー住所、教えてや。」
寂しがり屋なAが待ってるんは、
電話なんかやないって事を。
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まめまめた(プロフ) - 渡璃凛さん» 渡璃凛さん☆はじめまして!コメントありがとうございます!文才なんて恐れ多いっ( ;´Д`)誤字脱字だらけののろのろ更新ですが、引き続きよろしくお願いします(^^) (2020年9月9日 13時) (レス) id: a925dd1186 (このIDを非表示/違反報告)
渡璃凛(プロフ) - 初めまして!更新めっちゃ嬉しいです!その文才本当にリスペクトしております、、!更新頑張ってください!! (2020年9月5日 14時) (レス) id: d9624783f4 (このIDを非表示/違反報告)
まめまめた(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさん☆パワーワード笑確かに!笑 (2020年7月13日 12時) (レス) id: a925dd1186 (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - こんにちはm(_ _)m「章ちゃんの相方ちゃん」…なんてパワーワード…呼ばれたい…(ストーリーの主旨と離れててすみません) (2020年7月5日 22時) (レス) id: a475b78d7e (このIDを非表示/違反報告)
まめまめた(プロフ) - あーばるさん» あーばるさん☆コメントありがとうございます!他の作品も読んでいただいているとは、有り難し( ´∀`)今のところ丸山さん出番少ないですが、ここから出番が増えますので、お楽しみいただけるようがんばります! (2020年7月5日 19時) (レス) id: a925dd1186 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめまめた | 作成日時:2020年1月28日 14時