・ ページ28
半開きのドアの向こうから聞こえたその声が誰のものかなんて、
顔を見なくたって間違えるはずがない。
「ーーしん、ご…？」
だけど、ゆっくりと開いたドアから覗いた彼の表情は、
あたしの予想に反していた。
マスクで顔の半分は隠れて見えないけれど、
オデコまで赤く染めて眉を下げたその顔は、怒っていると言うよりも寧ろ…
そして、予想外の展開の最中、その情けない顔に、告白してくれた時の彼を思い出しているあたしは、
まだ頭が熱でやられているのかもしれない。
「お姉ちゃんが寝てる間に、勝手に連絡しちゃった。
治るまでこの部屋にいるのは構わないけど、ちゃんと自分の口で信五さんに説明しなよ。
もういい大人なんだから。
じゃあ、信五さん、後はお任せします。」
そう言って鞄を手にして立ち去ろうとするマキの行動力と強引さには感心するばかりだ。
一方のあたしは、当然だと思うが突然過ぎる展開についていけずに、
「マキちゃん、ありがとうな。」
律儀に妹に頭を下げる彼をボーッと見つめるしか出来なかった。
バタン、と玄関のドアの閉まる音を聞いた後、
「ーーA…」
彼はあたしの方を真っ直ぐに見て、小さく名前を呼んだ。
それだけで、胸が潰れそうなくらい苦しくなった。
「、、名前、久しぶりに呼んでくれたね…」
そして、やっぱり熱のせいなのか、馬鹿みたいに正直に思ったことが口から零れ落ちてしまった。
そんなあたしの言葉に、彼は少し驚いたように目を開いて、それから困ったみたいに笑った。
「ーーそやったか…？」
マスク越しの少し篭った声が、震えているような気がして、
「っ、ごめんなさい…」
また咄嗟に言葉が喉をつくけれど、
それが何に対する謝罪の言葉なのか自分でも分からなかった。
それから、しばらく続いた沈黙。
眉間にシワを寄せた彼が、必死に言葉を探しているのを見つめながら、
そもそも、彼は何をしにここに来たのだろうか…
マキに何て言われたんだろう…
そんな事をボンヤリと考えた。
そうしたら急に、フッと彼の眉間からシワが消えて、
「すまんっ、しんどかったら横になっとき？」
ベッドの傍に駆け寄るように近づいて、あたしの背中に掌が触れた。
彼の温度を感じた、その瞬間、
鼻の奥がツンと痛んで、
目蓋の奥が火傷しそうに熱くなって、
喉に空気が引っ掛かったみたいに息苦しくなって、
もう、止められなかった…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1309人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まめまめた(プロフ) - 渡璃凛さん» 渡璃凛さん☆はじめまして！コメントありがとうございます！文才なんて恐れ多いっ( ；´Д｀)誤字脱字だらけののろのろ更新ですが、引き続きよろしくお願いします(^^) (2020年9月9日 13時) (
レス) id: a925dd1186 (このIDを非表示/違反報告)
渡璃凛(プロフ) - 初めまして！更新めっちゃ嬉しいです！その文才本当にリスペクトしております、、！更新頑張ってください！！ (2020年9月5日 14時) (レス) id: d9624783f4 (このIDを非表示/違反報告)
まめまめた(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさん☆パワーワード笑確かに！笑 (2020年7月13日 12時) (レス) id: a925dd1186 (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - こんにちはm(_ _)m「章ちゃんの相方ちゃん」…なんてパワーワード…呼ばれたい…(ストーリーの主旨と離れててすみません) (2020年7月5日 22時) (レス) id: a475b78d7e (このIDを非表示/違反報告)
まめまめた(プロフ) - あーばるさん» あーばるさん☆コメントありがとうございます！他の作品も読んでいただいているとは、有り難し( ´∀｀)今のところ丸山さん出番少ないですが、ここから出番が増えますので、お楽しみいただけるようがんばります！ (2020年7月5日 19時) (レス) id: a925dd1186 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まめまめた
| 作成日時：2020年1月28日 14時
