阿呆 ページ19
side 村上
「信ちゃん、コレ。」
楽屋で広げとった台本の上にポンと置かれた花柄の封筒。
見上げた先には、ニッコリ引き上げた口角に反して明らかに怒りを孕んだヤスの目。
「ーー何や、コレ…？」
俺の問い掛けを無視するように背を向けて、俺から離れた席まで戻って行くヤスの態度に苛立ちを覚えながらも、置いていかれた封筒に、何や嫌な予感しかせぇへんかった。
ゆっくりと開いた封筒の中には、見慣れたカードキー。
「ーーな、んで…？」
そう呟きながらも、手のひらに戻ってきたカードキーが意味することなんて、いくら鈍い俺やってわかっとる。
そして繋がったんは、ここ最近の違和感の正体。
『今度でええやろ？』
Aとの約束を守られへんかったのは悪かったけど、仕事絡みの付き合いやからしゃーないし、そんなんでガタガタ言うような女やないし。
そう思いながら、あの日自宅に帰ったんは日付が変わった後やった。
案の定、Aはもうおらんくて、
やけど、確かに数時間前までここにおったんやっていうその空気だけは残っとって、
改めて感じる少しの罪悪感と、それを上回る安心感。
「仲良うしとったか…？」
擦り寄ってきたチィを撫でれば、気持ちよさそうに目を細めるんはいつも通りやのに、何故だかその目が少し寂しそうに見えた。
ふわっと、何や、よう分からへん違和感を感じつつも、そのまんま疲れた身体をベッドに沈めて眠りについた。
そこから２週間、消えへん違和感の正体を突き詰める暇もなく過ごしとった自分を、
今更、心底後悔した。
返信のなかったメッセージ。
少しだけスッキリとした部屋。
２週間、家に帰っても一度も感じひんかったAの気配。
あの日、Aは俺のところからおらんくなっとったのに、俺は気付きもせんかったんか…
「ーーっ、ヤスっ！」
慌てて立ち上がってヤスの方を振り返れば、静かな目ぇしてこっちを見とった。
ゆっくりと椅子から立ち上がってこっちに向かうヤスの表情には、怒りよりももっとごちゃごちゃした感情が溢れとって、
感受性の強いコイツはきっとAの気持ちを映す鏡になっとって、
今Aがどんな気持ちでおるのか…
やっと己の阿保さ加減に気付いた。
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まめまめた(プロフ) - colorfulcrayon2さん» colorfulcrayon2さん☆初ホロリとは、嬉しいコメントありがとうございます(*´∀`)せひとも全作品制覇してもらえたら嬉しいですっ♪ (2019年5月29日 13時) (
レス) id: 955d73cb24 (このIDを非表示/違反報告)
colorfulcrayon2(プロフ) - まめまめたさんの小説を今片っ端から読んでます☆全部胸キュンで、メンバーさんの表現も上手で楽しませていただいてます！ありがとうございます(*^^*)そして、茄子さんでまさかの初ホロリ涙してしまいました！！！素敵茄子さん、ありがとう！！！ (2019年5月27日 22時) (レス) id: bd237a513f (このIDを非表示/違反報告)
まめまめた(プロフ) - くみみさん» くみみさん☆はじめまして！数あるお話の中からこちらに目を留めて頂きありがとうございます(^^)号泣なんて、光栄な(*´∀｀*)他の作品にも是非遊びにきてください☆ (2019年5月18日 19時) (レス) id: 955d73cb24 (このIDを非表示/違反報告)
くみみ(プロフ) - はじめまして(^^)通りがかってこちら読ませていただきました。もう……号泣でした（笑）わたしのすきなコンビでしたのでなおさらかも知れません。他の作品も少しずつ読ませていただきますね！ (2019年5月18日 18時) (レス) id: ad06171a54 (このIDを非表示/違反報告)
まめまめた(プロフ) - まっきーさん» まっきーさん☆大遅刻のクリスマスプレゼント受け取ってもらえてよかったです〜(´∀｀)私の妄想の化身の章ちゃんサンタでした笑 (2018年12月27日 12時) (レス) id: 955d73cb24 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まめまめた
| 作成日時：2018年3月8日 10時
