・ ページ45
そしてトドメの一撃。
「あ、明日早いから俺そろそろ帰るわ〜」
「えぇー、まだええやん！」
いつものように四人で飲んでいる時、珍しく早い時間に一人席を立ったヤスは、
絡みつく酔っ払った大倉の腕を優しく解きながら、蕩けるような優しい笑顔で言った。
「明日、大阪帰るんよ。
彼女の誕生日やねん。」
「あぁ、まだ続いてたんや。
遠恋なんてよぉやるな、俺には絶対無理やわ。」
続く大倉の割と最低な発言も、
「しかも高校からの付き合いなんやろ？
まぁ、ヤスはそういうの似合うけどな？」
同意を求めるように話しかけて来た横山くんの声も、
なんだか遠くに聞こえた。
それでも、勝手に口は動くもので、
「ヤス、彼女いたんだ？！
高校からって…え、何年の付き合い？」
驚きの声を上げて指を折り曲げて交際年数を数えながらも、当然心の中では叫んでいたさ。
��彼女持ちが紛らわしい態度取るなよっ！！��
ーー多分、顔には表れていなかったと思うけれど。
その時、あたしは学んだのだ。
ヤスの優しさは特別なのもではなく、おそらく全人類に平等に与えられるものなのだ、と。
しばらく後に、その優しさが仇になったのか、遠恋の彼女とは破局を迎えたのだが、
たとえヤスがフリーになろうが、あたしはこの時の学びを忘れることなく胸に刻んでいる。
��ヤスの優しさを勘違いしない、その気にならない��
ヤスといる時は、もはや標語のようにこの言葉を心に掲げている。
だって、ヤスみたいな男に惚れたり、運良く彼女になれたりしたら、しんどい思いをするのは明白だ。
その優しさが向けられるのは自分だけじゃないとあたしは既に知っているのだから。
故に、今日も今日とて無防備に振りまかれる優しさも甘さも、真正面から受け止める事なく、
「じゃあ、今度の同期会はヤスの家で焼き鳥にしよう。」
とサラリと受け流す。
はずだったのに…
「俺はAと二人がいいって言うてるんやけど？」
突如耳元に囁き落とされた、普段のヤスとは掛け離れた低くて艶のある声。
「っ、、」
首筋から背中まで指でなぞられたような感覚を覚えて、思わず体が跳ねた。
「明日はちゃんと、夜まで空けといてな？」
言葉の出ないあたしを更に追い詰めるように、
また耳元に色気をたっぷり含ませた声が囁かれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 821人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さくらもち - 更新されていた当時からこっそり読ませて頂いていました。久しぶりに読んでみて、やっぱりまめまめたさんの作る世界が大好きで、ずっと1番です。もうここにはいらっしゃらないかもしれませんが、どうか届きますように。 (3月7日 2時) (
レス) id: 5f7a39fac4 (このIDを非表示/違反報告)
まめまめた(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさん☆今回も最後までお付き合いありがとうございます！こんな贅沢な眠れない夜なら大歓迎ですよね(//∇//)続き、やっぱり気になります？今妄想中のお話が書けたら、続編頑張ってみようかなぁ… (2021年6月4日 19時) (レス) id: a925dd1186 (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - 飲みの帰りに大倉くんに焼きモチ焼かれて、安田くんに１日一人占め宣言されて、横山くんがゲロ甘…。こんな夜過ごしたらバチ当たるよね！バチ当たりたい！！続編、何卒m(__)m (2021年6月4日 2時) (レス) id: d5063d2f63 (このIDを非表示/違反報告)
まめまめた(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさん☆新しいアルバムの特典とかにどうですか？！笑 お願いします、インフィニティさん（^人^） (2021年1月25日 13時) (レス) id: a925dd1186 (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - え…この乙女ゲーム、どこでダウンロードできますか？(笑) (2021年1月23日 2時) (レス) id: a475b78d7e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まめまめた
| 作成日時：2020年9月9日 13時
