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「……え」
思わず、手に持っていた鞄を落としてしまった。視線の先には道路を挟んだ向こう側の道を歩く愛する人の姿があった。間違いなく、彼である事を認識した私は目頭が徐々に熱くなっていった。
周囲の人々が鞄を落としたままフリーズしている人間に奇異の目を向ける。
それに気づいた私は慌てて鞄を拾った。少し先にリップクリームが落ちているのが見えた。それは自分のもので鞄を落とした時に転がってしまったことに気づいた。
拾おうと歩き出したところ、1人の男性がそれを手に取ってこちらを見た。
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「工藤……新一さん」
「ええ、探偵をやってます」
「あ、存じ上げてます。有名な方なので……」
目の前の男性の顔を見ると彼はニコリと笑った。
数年前、高校生探偵として何度か新聞で取り上げられていた時の記憶を呼び起こしてみると、あの時から成長こそしているものの綺麗な白い肌と長い睫毛、薄く綺麗な唇など、昔と変わらない美しい顔立ちのままである。
一時期消息不明と言われていたが大学生探偵としてまた新聞で取り上げられるようになっていた。
「それで、何か……?」
「いえ、貴方がとても辛そうな顔をしていたので……何か困った事でもあったのかと思いまして」
「あ、いえ……別に何も」
思い出したくはなかったし、探偵といっても他人に話すようなことでもないのでこの問題への入り口を閉めようとするが、彼はそこに無理矢理入ろうと言葉を詰める。
「あなたは何かを見て酷く反応した……。その前までは至って普通の表情をしていたにも関わらず、鞄を落としてしまうほどの衝撃を受けた」
「でも、人に話すようなことでは…………」
「流石に僕も探偵として困った方を無視はできないので」
彼はまだ私よりも若い。そんな子に話すのも何だか気が引けたが、私は探られるのも嫌になってきたので、ため息をついて話し始めた。
「見てしまったんです……………………夫が、知らない女性と腕を組んで歩いているのを」
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*柚木*(プロフ) - にゃーのまるさん» ありがとうございます。続きも頑張って書いていきますので応援よろしくお願いします! (2018年4月2日 10時) (レス) id: 4d1a807fc3 (このIDを非表示/違反報告)
*柚木*(プロフ) - nanoka(*´∀`)さん» お返事遅くなり申し訳ありません。嬉しいお言葉ありがとうございます (2018年4月2日 10時) (レス) id: 4d1a807fc3 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーのまる(プロフ) - 主人公の恋がなかなか叶わないのって夢小説だと少ない方なのでそれプラスキャラ作りが固まっていて引き込まれるストーリーで良かったです。 (2018年4月2日 4時) (レス) id: 4d95e3749f (このIDを非表示/違反報告)
nanoka(*´∀`)(プロフ) - 凄く、心撃ち抜かれました← これから好きになってくやつですね!!すごい好きです!続き、首長くして待ってます!! (2018年3月28日 23時) (レス) id: 3399c25298 (このIDを非表示/違反報告)
*柚木*(プロフ) - ひゆめさん» いつもありがとうございます〜!頑張ります(^^) (2018年3月24日 2時) (レス) id: 4d1a807fc3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:*柚木* | 作成日時:2018年3月8日 22時