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6話 ページ7

手放した意識が回復し
さほど時間が経っていない事に気づいた。


現在進行形で、私は背負われ、
運ばれている。


「降ろしてください」


聞こえたのか聞こえていないのか
私の言葉を無視して男は進んでいく。
目の前で揺れる綺麗な金色の髪の毛は
サラサラと流れるように左右に動き、
今にも透けそうなほど、夜の街に
輝いていた。

見た目よりもガッチリとした大きな背中に
私はもう一度同じ言葉を放つ。


「聞こえませんでしたか、降ろしてください。」


ピタリと彼の動きが止まった。
どこかの駐車場だろうか。人気がない。
「ちょっと」と声をかけた瞬間
まるで要らないものでも投げるかのように
雑に落とされ、地に体が着くと同時に
左下腹部に声に出せないほどの痛みが走った。

飽くまで、病人なのですが。

そう思い顔を上げた時だった。
漫画の中で見ていた優しい
面影などどこにもない冷徹なその瞳に
私はヒュッと喉を鳴らした。


「僕の名前は安室透、と言います。
先程は痴漢扱いされてしまいましたが、
職業は探偵です。」


淡々と自己紹介されるが
声も含め、表情が最早巷を
騒がせている安室透ではない。
これは、どちらかと言うと降谷の方だろう。


「実は、今この町でとある事件が起こって
いましてね。その被害者の方が
病院からいなくなってしまったようなんです。」


これは、すこぶる悪い状況なのでは。


「20代くらいの女性で、左下腹部を負傷。
手術後で体力が回復しておらず、フラフラして
いるはずだとか。偶然ですね。
今の貴女と状況がよく似ています。」


手首を掴まれた。
ギリギリと力が強くなってくる。

怖い。 怖い。

涙が溢れてくる。
ガタガタと、震えが止まらない。
冷淡で鋭い目が、まだ私を捉えて離さない。


「貴女の格好を見て、病院から出てきたのは
明らかだ。さらに、傷口が開いている所を
見ると、完治していないのにも関わらず
慌てて出てきたと言ったところでしょうか。」


逃げ出したい。
この場から一刻も早く。
さもなければ私はきっと…


「…。…先ほどまでの威勢の良さはどこへ
行ったんでしょうね?」


手首を離され、腰の抜けた私を担ぎ
近くにあった車の助手席に放り投げた。
劇中でも大活躍だった彼の愛車。
白のRX-7だ。


逃げ出したくとも、傷口がじんじんと
痛みだし、意識も朦朧としてきている。
そんな私にシートベルトをつけ
車のドアを施錠した彼は


「病院へお連れします。」


とだけ告げた。

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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 赤井秀一   
作品ジャンル:アニメ
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花音(プロフ) - いえいえ大丈夫です(* ´ ▽ ` *)無理しない程度に頑張ってください(*≧∀≦*) (2018年7月4日 13時) (レス) id: 9c91fd3a1d (このIDを非表示/違反報告)
酸化銅(プロフ) - 花音さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。最近ペース落ちてて申し訳ありません。頑張ります! (2018年7月3日 21時) (レス) id: 7ccb4bdc66 (このIDを非表示/違反報告)
花音(プロフ) - 面白いです!更新楽しみにしてます!! (2018年7月3日 5時) (レス) id: 9c91fd3a1d (このIDを非表示/違反報告)
酸化銅(プロフ) - 蒼さん» 感想ありがとうございます。初めて作品を作るので至らない部分があるとは思いますが、どうぞよろしくお願いします! (2018年6月24日 10時) (レス) id: 7ccb4bdc66 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 初めまして作品とてもよかったです。今後の展開がどのようになるのか気になるので続き楽しみにしています。 (2018年6月24日 9時) (レス) id: 0cf1ca60f5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:酸化銅 | 作成日時:2018年6月22日 22時

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