15話 ページ16
降谷は私を
物理的な意味でも、精神的な意味でも
追い詰めた。
この男、ただでさえ睡眠不足なうえ
少々キレやすくなっているのだ。
こんな状況下で
「私は違う世界からきました〜
ここは漫画の世界で、貴方の正体も
知ってるんだぞっ☆」なんて
言ってみろ。
間違いなく、私の顔と胴体はおさらばする。
「安室さん」
この沈黙の空気に耐えきれず
私は震える声でその名を呼んだ。
逃しはしない、と言うような彼の目が
すぐ近くにあった。
彼の淡い、ブルーグレイの瞳に
吸い込まれそうになる。
「今は… 今は、言えないんです」
「何故」
「理由も、言えません。誰にも。」
「僕に、信じさせてはくれないのか」
その降谷の言葉を聞くと
私は俯いてしまった。
そうだ、私は何を勘違いしていたんだ。
彼は、探偵である前に警察なのだ。
組織との関連性などないと、潔白を
証明して欲しかったに違いない。
私が本当に、被害者ならば
彼はまだ、私に手を尽くせたはずなのだ。
けれど私は、この世界の人間ではない。
この世界に私の戸籍はないし
帰る家も、頼れる人もいない。
「ごめんなさい、安室さん」
「……。」
顔を上げ、彼を見る。
ｰｰｰｰどうしてそんな顔を。
目の前の彼は、先程までとは打って変わった
別人のようだった。
今にも崩れてしまいそうな、そんな
表情を浮かべていた。
「…貴女の戸籍がないことも、貴女が
とある組織を目撃したことも
分かっていました。この事件の概要も
おおよそは掴んでいます。」
それでも、と降谷は続けた。
「それでも貴女は善良な、何も
関係の無い被害者かもしれない、と。」
今度は降谷が俯いてしまった。
降谷の中で、グレーゾーンだった私は
きっと、黒となっているのだろう。
彼の職業を知っている私は
そう判断せざるを得なかった。
「ひとつ、言わせてください」
降谷は俯いたままだ。
けれど、私は続けてポツリ、ポツリと
言葉を連ねる。
「その組織のことについて、少しだけですが
知識があるのは確かです。
しかし、私は"それ自体"には
関与していません。今回の事件を
目撃したのも、たまたまです。
戸籍がないこと、そして何故組織について
知っているのかをお話することは
今はできません」
降谷が顔を上げた。
前髪がかかっていて、表情が
読み取れない。
「ですが、私は敵ではありません。
貴方の敵ではないのです。」
降谷は無言で、私の言葉を
余すことなく聞いていた。
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花音(プロフ) - いえいえ大丈夫です(* ´ ▽ ` *)無理しない程度に頑張ってください(*≧∀≦*) (2018年7月4日 13時) (
レス) id: 9c91fd3a1d (このIDを非表示/違反報告)
酸化銅(プロフ) - 花音さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。最近ペース落ちてて申し訳ありません。頑張ります！ (2018年7月3日 21時) (レス) id: 7ccb4bdc66 (このIDを非表示/違反報告)
花音(プロフ) - 面白いです！更新楽しみにしてます！！ (2018年7月3日 5時) (レス) id: 9c91fd3a1d (このIDを非表示/違反報告)
酸化銅(プロフ) - 蒼さん» 感想ありがとうございます。初めて作品を作るので至らない部分があるとは思いますが、どうぞよろしくお願いします！ (2018年6月24日 10時) (レス) id: 7ccb4bdc66 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 初めまして作品とてもよかったです。今後の展開がどのようになるのか気になるので続き楽しみにしています。 (2018年6月24日 9時) (レス) id: 0cf1ca60f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：酸化銅 | 作成日時：2018年6月22日 22時
