本音、聞いてあげましょうか【オリジナル】

テレビ ページ1

スルリと細い、それでいて男らしい指が私の
指に絡められる。



手を繋いだ。ただそれだけのこと。

だが、それだけのことでも頬が熱くなる自分がいる。



耳まで真っ赤な私を見てクスクスと笑う。

恥ずかしさと急にこんなことをされた怒りで視界が
うるむ。



男は頬を伝う私の涙を見て驚いたように目を見開く。
手が一瞬緩む。


今、と思い逃げ出した。
いや、逃げ出せたと思った。


ガッと手首を掴まれる。



また、笑う。




そして、そして





いやー、この俳優イケメンだなぁー。


この月9ドラマキャストが豪華すぎない？
今まで数多のドラマを見てきた私でもびっくりだわ。


あなたもそう思いません？


あ、申し遅れました。
私、テレビです。


本音を聴きに来てくださった方ですよね？

わざわざありがとうございます。



いや、ね。持ち主のことが嫌いな訳ではないんです。
ただここ最近の行動がちょっと…


このおばあちゃん、一人暮らしで。

子供も家を出まして。



それは良いことなんです。
けど、全然帰って顔を見せないんですよ。


だから、おばあちゃんが少ーし認知症気味てきた
ことにも気づかなくて…



すみません。少し話がズレてきましたね。



まあ、要約するとおばあちゃんが頑固になってきた
って事で…


それがなんだって話なんですけど。

けど、頑固になったのが原因でちょっと問題が。



叩くんですよ、私を。


昔のテレビを叩くみたいに。


あ、昔のテレビは叩けば治るっていう訳でもない
ですよ？


…また話がズレましたね。

で、愚痴っていうのが叩くってことです。


私もチョッピリ年なんで、リモコンが効きづらかった
りしちゃうんですよ。

そうしたら、叩くんです。


叩いて治る訳無いじゃないですか。


さらに調子悪くなりますよ。




私、この人とずっと一緒にいたいんです。


優しい、この人と。


あはは、惚気みたいになってしまいましたね。

はい、もう愚痴じゃありませんね。


今日は、どうもありがとうございました。

少しスッキリしました。



愚痴じゃなくて、こんな話を聞いて欲しかっただけ
かもしれませんね。


はい。では。


〜


「…もう！このテレビ調子悪いわね。


こんなの捨てて新しいの買っちゃおうかしら。」

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