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Yuri side
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信じてはもらえないでしょう.. 宏太はそう呟いて、僕の手からカップを取り上げ、僕に瞼を閉じるよう促した。
「 侑李様が幼かった頃と今の俺を見比べて 」
その言葉を合図に、頭の中が回る。..酔う感じはしなかった。ただ、思考が停止しているかのように、脳髄を掻き回されているように、頭がぐちゃぐちゃになる。それが数秒続いて、ぴたりと止んだのと同時に見覚えのある部屋に立っていた。
ベビーベッドで幸せそうに眠る赤ん坊がいる。
部屋を見渡してみると、あまり物は置かれていない。それからベッドの枠組みにつけられたプレートにはYuriと書かれていた
つまり、あれは僕だ
赤子の頃の自分を見るなんて、変な感覚。
ベビーベットの傍には、書き物をしている男性がいて、恐らく、僕の成長記録を記しているのだろう。‘僕’が起きているのに気が付いた男性は
「 腹が減ったのか? 」
そう言いながら部屋の隅の方で何やら作業をして、再びベッドの前に戻ってきた。そして、赤子を抱き上げて、赤子の頬にミルク瓶を押し当てた。反射的にゴム製の先端を頬張る赤ん坊に
「 なんと愛らしい.. 」
そう呟いた男性の声には聞き覚えがある
顔を覗き込もうとすると急に視界が真っ白になって、
次は、.. 庭で遊んでいる5歳くらいの僕だ。
近くのベンチに座っている夫婦は若い頃の父母だろう。5歳頃の僕は宏太とボール遊びをしているようだった。
‘侑李様が幼かった頃と今の俺を見比べて’
先程のこうたの言葉が頭に過ぎり、僕は、僕が幼い頃のこうたを目に焼き付けてそっと瞼を開ける。するとこうたが鼻がくっついてしまいそうなほどの距離にいて、思わず飛び退いてしまう
気のせいだと思うけど、.. 否、気のせいだと思いたい。こうたの瞳が新緑のような綺麗な緑色をしていた。
「 .. 我が主、侑李さま。此方を見て。 」
その言葉にふと我に返る。
数十年前の、僕が幼い頃のこうたを頭に浮かべながら いま僕の隣にいるこうたとの違いを探した
.. 何故だろう、僕の記憶力が悪いのか
昔のこうたと全く変わっていないようにみえる
それに 僕が赤子の頃の男性の声、あれはこうたの声だ。つまりあの男性はこうたで、僕が生まれるより前から城に仕えていた事になる
赤子の頃の僕の世話を任される程信頼されているならかなり長い間、僕の家に仕えている筈だ。少なくとも、僕が生まれる10年以上前から
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飴玉(プロフ) - dieさん» 気付かなかったです、、指摘ありがとうございます。 (2019年5月29日 2時) (レス) id: 64b07fc015 (このIDを非表示/違反報告)
die - サブのスペルはsubです。sudじゃありませんよ (2019年5月23日 8時) (携帯から) (レス) id: db94f04552 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飴玉 | 作成日時:2018年11月19日 13時