・ ページ9
暖色の三角ガーランド、オーナメントやら雪の結晶やらが飾り付けられた、頂点の金星が目立つクリスマスツリー、白いテーブルクロスに置かれた豪華な料理。
その派手さすら、彼にとっては拷問であった。
無論この空気からは一刻も早く抜け出したいイソップであったが、出入り口にはエマが立っていている為無断に抜け出せそうも無い。この場に留まるしか無いと判断した彼は、この場で空気なろうと決心した。特に酒を飲んで盛り上がっている弁護士のフレディ・ライリーや泥棒のクリーチャー・ピアソンの前では。彼等には絶対捕まりたく無い。
しかしそんな彼の作戦という名の願いは、いとも簡単に破られてしまう。それもその筈、個性豊かな者たちが集まるこのエウリュディケ荘園は、皆新人に興味津々なのだ。それは陣営関係なく。
彼と同じゲームに参加した者、まだ話してないからと彼に接近してくる者、一緒に飲まないかと酒を勧めてくる者。
ここでは彼の対人恐怖症は、これまでの生よりもさらに重大な枷になる。
まだ幸運なことに、彼が目星を付けていたあの泥酔人達に話しかけられる事は無かった。
少なくとも五人を捌き、早くも憔悴してしまったイソップは、心に一つの違和を抱いた。それは彼が日記に皮肉を込めて書いた天真爛漫、トレイシーが居ないのである。
彼にとって彼女は、ただの厄介者でしか無い。しかし初対面で開口一番に名を聞いて来たあの陽気な女性が、この様な行事に参加しないとは考えにくい。
何故か気になり、イソップは出入り口に立っているエマに恐怖心を抱きながら話し掛けた。
「あの……すいません、機械技師の方は……何処に……?」
「トレイシーなら少し体調を崩しちゃったみたいで今外にいるなの!もしかして、トレイシーが気になるなの?」
「いえ……そういう…..」
そう言いかけて、一つの思案が彼の脳内に浮かんだ。体調が悪くてこのパーティを抜けられるのなら、今ここで不調を訴えれば抜け出せるのではないか。と。実際に、派手さと酒の匂いで彼は気分が悪くなっていた頃である。
「訳ではないんですが……僕も少し体調が悪いので、抜けても……」
「本当なの!?それは大変なの!!今すぐ休んだほうが良いなの!!」
エマの驚きは大層なもので、彼女はさっさと扉を開けた。すると彼女は何処か申し訳なさそうに
「無理させちゃってごめんなさいなの…。」
と彼に告げた。
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちゃば - 申し訳御座いません。突然ログインが切れてしまったので一旦投稿を中止します (2022年1月14日 22時) (レス) id: 94d93d2c55 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃば(プロフ) - 百日草さん» コメント有難う御座います。ただの未熟者ですがこれからも精一杯頑張らさせて頂きます。 (2021年12月30日 16時) (レス) id: 94d93d2c55 (このIDを非表示/違反報告)
百日草 - 更新頑張って下さい。応援しております。 (2021年12月30日 15時) (レス) @page7 id: 46e6433036 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ちゃば | 作成日時:2021年12月30日 12時