出会い ページ8
夜。イソップの部屋の外から騒々しさが聞こえる。昨日から続くこれは彼にとっては大きな障害であり、同時に今すぐにでも消し去りたい悪夢でもあった。
部屋の静粛と外の騒々しさのコントラストはいかにも不思議で、真逆。彼が日記に記した通り、初日のゲームと二回目のゲームの様に。まさに隠と陽、影と光。普通で有れば真っ先に光の方へ飛び込みたいと思うのが人の性。しかしいつの日かから持ち合わせた対人恐怖症という己の性質から、彼は光の方へ行こうとはせず、そのまま影に籠ろうと扉をきっかりと閉め、一切の光を通さなかった。
外から二回のノック音がし、室内に響いた。それは彼が五日目の日記を書こうとした瞬間の出来事である。
流石に無視は常識外れだと判断したのか、彼は椅子から立ち上がると、厭わしそうに扉を開けた。久々に彼の部屋に設置された電灯以外の光が差し込んだ。
「イソップさん、食堂に来て欲しいなの！」
その光の中心には庭師のエマ・ウッズが立っていた。普段から持ち合わせている緑色の工具箱は何処かに置いて来たらしい。
沈黙。イソップはこれまた大層不愉快そうに眉を顰め、エマはその場で笑顔を絶やさず返答を待ち遠しそうにしている。
「お願いなの、一回で良いなの！」
しかしそんな彼女もイソップの沈黙には痺れを切らしたのか、その場で両手を合わせて懇願する。にそんな様子を見て、流石に対人恐怖症の彼もバツが悪くなったらしく
「……分かりました……。」非常に微量で、不機嫌そうな声であった。
「本当なの！ありがとうなの！」しかし彼女は喜んだ。
一分も経たずに、エマはイソップを食堂へと連れてきた。というのはあくまで彼女の口から言い訳であり嘘である。本当は彼女が半ば無理矢理引っ張って来たのだ。
「「「イソップ、荘園へようこそ！」」」
エマが「イソップさんを連れて来たなの！」という声の後、多数の声と何かが弾けた音が彼の耳に厄介に響いた。刹那、その大音量に彼は目を見開いたがー誰もそれを確認出来ずに、また無表情に戻る。
「クリスマスパーティーも兼ねてイソップさんの歓迎会をしようと思って、みんなで準備してたなの！是非楽しんで欲しいなの！」
ああ、苦手だ。とイソップは思った。何時もの食堂ですら彼にとっては派手なのに、今日はパーティー様に飾り付けられた無数の装飾が、普段の何十倍とも派手さを演出している。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちゃば - 申し訳御座いません。突然ログインが切れてしまったので一旦投稿を中止します (2022年1月14日 22時) (
レス) id: 94d93d2c55 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃば(プロフ) - 百日草さん» コメント有難う御座います。ただの未熟者ですがこれからも精一杯頑張らさせて頂きます。 (2021年12月30日 16時) (レス) id: 94d93d2c55 (このIDを非表示/違反報告)
百日草 - 更新頑張って下さい。応援しております。 (2021年12月30日 15時) (レス) @page7 id: 46e6433036 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちゃば | 作成日時：2021年12月30日 12時
