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再会 ページ16

それはイソップが三回目の作業をしようと食堂の扉を開けた時である。そこには彼がここ数日話したいと願いっぱなしだったあの踊る屍、赤ずきん姿のトレイシーが何やら作業をしつつ腰掛けていたのだ。机の上にはペンチやらの工具品と、人形の様な灰色の腕。彼女の背後の壁には、何時もゲームで使用しているあの無機質な灰色の機械人形が座っていた。人形には、右腕の欠損が見られる。
ギイと扉が五月蝿く閉まる音がした。それでも彼女は作業を続ける。
無音の中、イソップはトレイシーの横の椅子に腰掛けた。また彼女と同じく、彼が何時もゲームで使用している灰色の鞄を机の上に静粛に置き、そこから何やら色々な物を取り出して作業を始める。
数分経とうが数十分経とうが、二人の間に会話は無かった。しかしイソップの心中は、トレイシーに対しての忘我で一杯である。作業は進んでいない。

「……カールさん。」ふと、トレイシーが口を開いた。
「…何ですか?」少し間を開けて、イソップが手を止めて応える。
「パーティーの件は平気でしたか。」しかし彼女は作業の手を休めない。
「はい、貴女のおかげで。」
「そうですか。」

二人の会話は、そんな二言程度で終わるかと思えた。しかしイソップは、この好機を逃して仕舞えばもう後は何時になるか分かったもんじゃないと判断したのか

「…レズニックさん。」今度は彼も作業を続けたまま。
「何ですか。」彼女は人形の腕をまじまじと見つめる。
「今何をしているんですか。」
「…今日のゲームで機械人形が壊れてしまったので、その修理です。」
「そうですか。」
「カールさんは…何をしているんですか。」
「…棺を作っています。」

トレイシーの手が途端に休まる。機械を修理していた割には随分と静かであった作業なのだが、それにも勝るこの静寂さの中では五月蝿い。イソップはそんな彼女を気に留め、自分もまた手を止めた。

「……カールさん。」それは、彼女がこの夜に屍として発した一言目よりも小さく、生気がない声だった。
「…レズニックさん?」彼の興奮は、より一層激しいものへ変わっていく。
「…死体、見たくありませんか?」

その一言を機に、彼の心臓の鼓動と興奮は瞬く間に高くなった。ここ数日永久に続いていた彼女に対しての興奮ーそれが今の一言で爆発したのだ。しかしそれを表に出すことは無く、だけどトレイシーをはっきりと捉えて

「どういう事ですか?」

・→←12月27日



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設定タグ:第五人格 , 納棺師 , 機械技師
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ちゃば - 申し訳御座いません。突然ログインが切れてしまったので一旦投稿を中止します (2022年1月14日 22時) (レス) id: 94d93d2c55 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃば(プロフ) - 百日草さん» コメント有難う御座います。ただの未熟者ですがこれからも精一杯頑張らさせて頂きます。 (2021年12月30日 16時) (レス) id: 94d93d2c55 (このIDを非表示/違反報告)
百日草 - 更新頑張って下さい。応援しております。 (2021年12月30日 15時) (レス) @page7 id: 46e6433036 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちゃば | 作成日時:2021年12月30日 12時

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