推しの彼氏

抱きしめられる ページ30

.










もうすぐ試合が始まる。



着ぐるみの仕事は始まる前と終わった後の
客席へのファンサだけなので、
ダグアウト裏に引っ込んだ私は着ぐるみの頭を取った。


あとはベンチ裏で、
選手のコンディショニングをするため待機。


トレーナーの仕事もしっかりあります。




それにしても、着ぐるみって大変なんだな。
暑いし重いし、早く動けないし。


でもなんとなく愛着が湧いてしまった
とらぴの頭を持ってまじまじ眺めていた、時だった。






湯浅「A、」






大好きな声で名前を呼ばれて、
びっくりして振り向く。



あっという間に視界が湯浅の胸で埋まり、
抱きしめられてることを理解するまで時間がかかった。






湯浅「あー、やっと会えた」


『……え！？ゆゆゆ湯浅、』


湯浅「どこおったんよ、探したで」






耳元で優しい声がする。


汗と湯浅の匂いで胸がいっぱいになって。


存在を確かめるようにぎゅーっとすがりつく。



本物だって思ったら、涙が出てきた。


鼻をすする音で気づいた湯浅が吹き出す。






湯浅「なんで泣くん笑」


『わかんない、なんか……湯浅不足だったの』






ちょっと間があって、うん、俺もって。


私と全く同じ気持ちでいてくれたわけないのに、
幸せすぎて勘違いしそうになる。




と、誰かの靴音が聞こえ、
弾かれたようにばっと身体を離した。


選手とトレーナーが抱き合ってるところなんて
見られたら、大変なことになる。



お互い恥ずかしさが来たのもあって、
微妙に距離を取った。





それにしても、嬉しかったなあ。


熱い頬を冷ましながら、
まだ身体に残る感触にどきどきする。




湯浅って、細いのに筋肉あって、力も強くて


これ以上抱きしめられてたら、
心臓が壊れちゃってたかも。










.

触って→←どこおるん

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す