その瞳に映るのは 2【ハイキュー】 (ページ8)

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56 *話追加ページ8

宮城の青々しい山を見上げ、今自分は東京と離れた所にいるのだと改めて思わされる

5月の涼しい風が吹き、髪の毛が靡く
真っ青な空も清々しく、とても気持ちがいい空気を吸い込み、気合を入れて歩き出した
車が通る大きな道の先にはなにやら急斜面らしきものが遠くから見える

そしてなにかに気づいたように顔を上げてあたりを見渡した
青々と木々が茂る初夏の街の外れに、かすかに神輿でも担いでいるような掛け声がする。

『何？この声、お祭り？』

耳を澄ませば、その声は奥の坂道から風に乗って聞こえてくるようで、急ぎ足でリズムに乗った声がする方へと向かった

ヘイ！ヘイ！ヘイ！ヘイ！ヘイ！
サッコーイ！！サッコーイ！！

熱されたアスファルトに揺れる陽炎の中から、ピョコピョコと飛び跳ねながら叫ぶ集団がいる

坊主頭が飛び跳ね、1人小さな男子が舗道を転がる
その後ろで何人かが、創作ダンスじみた謎の動きとともに坂を登っているではないか

聞いたことがある。
昔昔、遠い小さな田舎の町では、何やら危ない儀式が盛んになっていて、今でもそれが伝統として続けられているとかいないとか

もしその儀式をしている人達に出逢えば、命はない
という噂

『や…はやく逃げないと』

初めて見るその光景に、Aは足がすくみ、近づいては行けないと危険信号が出される
やばい、これはやばい。田舎だと本当にあったんだ
目が合えば殺される！！

そう確信し、逃げ出そうとした時
自分の後ろからワンワンと低い犬の鳴き声が聞こえた
その声に、Aの前にいる怪しげな集団も動きを止め、こちらをゆっくりと振り返ってくるではないか

『い、いやー！！！！！無理ー！！！』

目を合わせないために、気づいたら叫びながら走り逃げていた
町に戻り、息を整えていると名前を呼ばれ振り返る
そこには、孤爪を連れた黒尾がいた

「おい、連絡返さないから探したぞ……ん、どうした？」

『く、黒尾センパァァイ！！』

下を俯いていたAは、目に涙をうかべ黒尾の胸に飛び込んできて、服をギュッと掴んでいる
死にたくない、死にたくない……！と泣きながら言うその様子に2人とも驚き、黒尾は両腕を上げ、「なにこれ？！」と焦っていた

泣きながら合流したA、そして黒尾と孤爪
練習試合前に、事情を聞いた黒尾が直井や監督、夜久達に話せば、んな馬鹿なっと笑っていた

Aが見たものとはいったい……

───
先程の心臓破りの坂では……

「これぞ、日向ホイホイ！」

「練習をエサにして日向を誘ってるんす！大地さんも一緒に！サッコーイ！」