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1階にある自動販売機へ飲み物を買いにいこうとしていた時
見覚えのある後ろ姿があった
名前を呼ぶと、ビクッと肩を揺らしたAはゆっくりと後ろを振り返る


『赤葦くん』

「どうしたの、その荷物」

『アハハ、洗濯するの忘れててコインランドリー行くの』

「え今から?」

ついうっかり……と、気まずそうに笑っているAの手元を見れば、カゴに大量に入ったタオルがあった。コインランドリーに行くという彼女が心配になる

「音駒周辺にあるの?」

『うん、歩いて10分もしないよ』

毎日当たり前のように使っているタオルはマネージャーが洗ってくれていて、有難いなと思う反面申し訳なさも出て来る赤葦

『この事はどうか内緒で…』

と、眉を下げて赤葦にお願いしたAは靴を履いて出ていこうとするため、赤葦はちょっと待っててと声をかけた

「俺も着いてくよ、心配だし」

『え、でも疲れてるでしょ』

「そんなのマネージャーもでしょ。夜道1人で歩かせる訳にも行かないしさ」

普段木兎のお世話係をしている赤葦は、放っておけずに玄関に向かい靴をとってきて、校門から外へ出た。歩道を歩いているとなんかごめんね。と謝るAに、気にしないでと言う

『何気にちゃんと話すの始めてだよね』

「そうだね、いつも木兎さんが絡みにいってるのに止めに行ってただけだったし」

郊外にある音駒周辺は大きなビルもなく、割と落ち着いている街だ。のんびりとした住宅街の合間にあらわれる空き地からは鈴虫が泣いていて、生温い夜風に乗ってかすかに電車の音も聞こえてくる

『赤葦くんはさ』と言いかけると、優しい表情で「京治でいいよ」と言われ、Aも名前で呼んでとにこりと微笑んだ。

その後バレーをいつから始めただとか、木兎に惹かれ梟谷に入ったものの、想像以上に大変な人だったなど話していた

『木兎さん1年生の時からオーラあったんだねえ』

なんて頷きながら楽しそうに話を聞く彼女は、思ったより話しやすく最初に感じた物静かな印象とは違っていたため、木兎がよく話しかけに行く理由がわかった気がする

「ごめん、俺ばかり話して」

『えー、色んな話聞けて楽しいよ』

自分ばかり話していたことに気付いて謝れば、何言ってんの!と笑っていた

『それより荷物重くない?』

「全然平気」

『京治は優しいね』

赤葦に荷物を持ってもらっていて、手ぶらなAは足取りが軽そうだ。夜の散歩といって楽しそうに隣を歩いている

(素直に褒められるって嬉しいな)

久々に思い出した木兎に褒められた時と同じことを

『どうしたの?』

直ぐに薄暗い看板が立つコインランドリーの前に到着していた

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作者名:ぱるむ | 作成日時:2024年3月11日 1時

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